日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本国際問題研究所」の意味・わかりやすい解説
日本国際問題研究所
にほんこくさいもんだいけんきゅうしょ
The Japan Institute of International Affairs
外交・安全保障に関する日本の政策シンクタンク。英語の頭文字をとってJIIAと略称する。国問研と略されることもある。元首相の吉田茂が1959年(昭和34)に設立、翌1960年財団法人として認可された、日本のシンクタンクの草分け的存在である。「核軍縮・不拡散」や「集団的自衛権行使範囲の拡大」を繰り返し日本政府に訴えているほか、「北朝鮮核問題の解決のための政策提言」(2005)、「尖閣(せんかく)諸島をめぐる問題に関する緊急提言」(2012)など時事的問題にタイムリーな提言を発表。アメリカ戦略国際問題研究所(CSIS)など内外の有力シンクタンクや大学・研究機関との交流・共同研究、外国人研究員の招請、国際シンポジウムの開催、月刊「国際問題」などの出版や電子媒体による情報発信を行っている。財団内の軍縮・科学技術センターは包括的核実験禁止条約(CTBT)の国内事務局の機能をもつ。2021年にアメリカのペンシルベニア大学による世界シンクタンク評価で「シンクタンク・オブ・ザ・イヤー2020」、アジア第1位、世界第8位に選ばれるなど、世界の各種シンクタンクランキングで上位に選ばれている。
第二次世界大戦後の日本の発展には国際問題の研究と諸外国との交流が不可欠だとの判断から、イギリス王立国際問題研究所(Chatham House)をモデルに設立された。発足時は外務省所管の財団法人だったが、2012年(平成24)に公益財団法人(内閣府所管)になった。1976年からは解散した欧ア協会の業務を継承し、2014年には世界経済調査会を統合した。トップは会長職で、初代会長は吉田茂が務めたが、その後は鹿島守之助(かじまもりのすけ)(1896―1975。鹿島建設)、堀田庄三(1899―1990。住友銀行〈現、三井住友銀行〉)、平岩外四(ひらいわがいし)(東京電力)ら経済界トップが就任。職務執行代表者は理事長職で、歴代、外務省OBが務める。財源は政府などからの委託調査収入、会費(法人会員約150社、個人会員約400人)、出版物収入、補助金などである。2023年(令和5)時点で研究員、フェローらスタッフは約70人。本部は東京都千代田区霞が関(かすみがせき)。
[矢野 武 2023年8月18日]