改訂新版 世界大百科事典 「日本王国記」の意味・わかりやすい解説
日本王国記 (にほんおうこくき)
16世紀末に来日したスペイン人アビラ・ヒロンが書いた日本記。アビラ・ヒロンは長崎を中心に東南アジア方面で活躍した貿易商人で,1619年(元和5)3月ごろまで20余年,長崎に滞在したことがわかる。本書は23章からなり,最初の3章は日本総記として,彼の長年の日本見聞,体験をもとに日本社会一般が扱われており,当時の状況をよく伝えている。とくに貿易,取引関係の記述は重要である。4~5章は彼の来日前の日本の歴史で,三好長慶の上京から織田信長,豊臣秀吉らによって天下統一されてゆく過程が描かれている。6章以降は秀吉の晩年から徳川家康の時代約20年間の社会の状況とキリスト教布教,迫害,殉教の歴史が記されている。来日した宣教師によって書かれた日本記述は多いが,本書は俗人の手になる日本記として貴重な存在である。邦訳は《大航海時代叢書》所収。
執筆者:岸野 久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報