日琉同祖論(読み)にちりゅうどうそろん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日琉同祖論」の意味・わかりやすい解説

日琉同祖論
にちりゅうどうそろん

琉球(沖縄)の文化、住民は日本文化、日本民族の分かれたものであるという学説、考え方。琉球処分(1879)を契機に日本社会の一員となった沖縄は、それ以前までの長い独自な歴史過程により、本土社会とは異なる風俗、習慣、制度をもっていた。そのために、沖縄を特殊視する見方がおこり、ややもすれば偏見差別の意識が生じやすかった。こうした状況に直面して、沖縄の住民とその文化の本質究明しつつ、それが日本民族、日本文化と同根のものであることを主張する努力が行われた。20世紀初頭から伊波普猷(いはふゆう)によって体系化され始めたこの学説、考え方はしだいに主要な思潮となり、戦後の復帰運動を支える思想的な底流となり、今日に及んでいる。現在の「沖縄学」においてもこの理解は学問的に大枠においては了解されており、定説に近い地位を占めるに至っている。そのうえで、琉球文化のもつアジア的性格をも追求する努力が近年とみに盛んとなった。しかし、一方では琉球文化そのものの究明を軽視する傾向に陥るとして、日琉同祖論の発想、思想に疑問を呈する考え方も存在する。

[高良倉吉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例