垂仁(すいにん)天皇の皇后日葉酢媛命(みこと)の狭木之寺間陵(さきのてらまのみささぎ)。その所在は長く不明であったが、1875年(明治8)奈良市山陵町の御陵山(みささぎやま)に治定された。墳丘長207メートルの前方後円墳で、雄大な佐紀盾列(さきたたなみ)古墳群の一角をなす。神功(じんぐう)皇后陵にあてられたこともある。後円部墳頂の平坦(へいたん)面中央にある長大な竪穴(たてあな)式石室は、短側壁に方孔のある磐石(ばんせき)を立てるなど特殊な構造である。石室を囲んで一辺約16メートルの方形に石垣が築かれ、その内側を盛り土で封じ、頂に屋根形石をのせ、外側に埴輪(はにわ)を立て並べる。石室内から仿製(ぼうせい)鏡三面以上、車輪石・石釧(いしくしろ)・鍬形(くわがた)石・刀子(とうす)・斧(おの)・高坏(たかつき)・椅子(いす)・合子蓋(ごうすぶた)・臼(うす)・貝形・琴柱(ことじ)形などの碧玉(へきぎょく)製品が、石室外から蓋(きぬがさ)、盾などの埴輪が出土。代表的な前期古墳の一つ。野見宿禰(のみのすくね)の献策で人身御供(ひとみごくう)にかえて埴輪を初めて立てたという『日本書紀』の説話でも有名。
[笠野 毅]
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