狂言の曲名。雑狂言。大蔵流では大名狂言。召使いを連れずに外出した男が、行きずりの若狭(わかさ)の昆布売(シテ)を刀で脅し、むりやり自分の太刀(たち)を持たせる。腹にすえかねた昆布売は、男が油断したすきに太刀を抜いて逆に脅し、小さ刀(ちいさがたな)を取り上げたうえ、昆布を男に押し付けて売らせる。売り声にさまざまな節をつけて謡い舞わせたすえ、商売繁盛の文句を男に謡わせておいて、昆布売は返す約束の刀を持ったまま逃げて行く。類曲『二人大名(ふたりだいみょう)』同様、ストーリーに下剋上(げこくじょう)的気分も漂うが、さまざまな節で昆布を売るという趣向がこの曲では中心をなしている。売り声の節は、大蔵流が平家節、小歌節、踊り節、和泉(いずみ)流が謡い節、浄瑠璃(じょうるり)節、踊り節を用いる。
[池田英悟]
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