改訂新版 世界大百科事典 「普遍人」の意味・わかりやすい解説
普遍人 (ふへんじん)
universal man
多面的才能を兼ねそなえた人間。スイスの史家ブルクハルトが《イタリアにおけるルネサンス文化》(1860)のなかで,ルネサンスが生んだ万能の天才を〈普遍人uomo universale〉として特色づけて以来,広く使用されるようになった。普遍人は,特異な狭い領域にのみ才能を発揮する〈異才人uomo singolare〉と対比され,他方,狭くはないがその広さが特定の領域,たとえば学識や芸術にのみ限られる百科全書的知識人や万能芸術家とも区別される。すなわち,あらゆる領域で新しく,かつそれらのジャンルにおいて完成されたものだけを創造し,しかも人間としても偉大な印象を与えるような人間が普遍人であり,そのような人間がルネサンスのイタリアには輩出した。たとえばL.B.アルベルティやレオナルド・ダ・ビンチなどがその典型とされる。普遍人はまた〈個人の完成〉というルネサンスの人間理念とも結びついている。
執筆者:清水 純一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報