改訂新版 世界大百科事典 「村総作」の意味・わかりやすい解説
村総作 (むらそうさく)
〈村惣作〉と書く場合も多い。日本の近世において,村内に病気,欠落(かけおち),出奉公(でぼうこう)などによる労働力減少で自家所持耕地を耕作できず,したがって所定の年貢を払えない農家が出た場合,他の村人が代わって耕作すること。近世の村は年貢村請(むらうけ)制であったから,村内に耕作放棄者(家)が出ると,その分をだれかが埋めなければならなかった。このような場合の連帯責任は五人組が負うべきものとされていたが,実情はさまざまであった。中期以降の関東,ことに北関東では,都市や町場への出奉公を主因とする耕作放棄現象が広範に起こり,そのために総作すら不可能になり,年貢減少に帰結した村が少なくない。東北地方では飢饉による災害がひどく,人口減による耕地減少も見られた。村総作体制は,村内における耕作放棄が偶発的かつ少量の場合は,領主にとって有効であったが,広範な社会的動揺に根ざした耕作放棄の場合には有効とはいえなかった。
執筆者:木村 礎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報