欠落(読み)ケツラク

デジタル大辞泉 「欠落」の意味・読み・例文・類語

けつ‐らく【欠落】

[名](スル)一部分が欠け落ちること。「金銭感覚が欠落している」「記憶欠落部分」
[類語]漏れ落ち抜けけつ欠如欠損欠員遺漏脱漏脱落欠漏疎漏空き間引き不備尻抜け抜かり手抜かり手落ち仕落ち

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精選版 日本国語大辞典 「欠落」の意味・読み・例文・類語

けつ‐らく【欠落】

  1. 〘 名詞 〙 一部分が欠け落ちること。比喩的にも用いる。
    1. [初出の実例]「不識何人行道記、蛟龍欠落臥花陰」(出典:蕉堅藁(1403)永青山廃寺)
    2. [その他の文献]〔拾遺録‐軒轅皇帝〕

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改訂新版 世界大百科事典 「欠落」の意味・わかりやすい解説

欠落 (かけおち)

日本中世とくに戦国時代において,人々が軍役・貢租の負担や戦禍から逃れるため他領に流亡することを欠落といった。欠落人は被官(下級武士)から農民諸階層にわたった。農民層の場合,村ぐるみの組織的な逃散ちようさん)とくらべて,とくに小百姓,下人など隷属的な階層の個別・散発的な家族ぐるみの欠落が著しく,欠落の行先は近隣の農村よりは他領の宿場城下,門前など遠く離れた町場の例が数多く知られる。より自由な都市的な場への流入とみることができよう。これらの欠落人の帰属をめぐって,本主と他領との間で紛争が起こることもしばしばであった。戦国大名は,欠落が軍役体系や農村支配の底辺を動揺させ,領内の対立紛争を引き起こす原因をなすものであったことから,欠落対策をとり,もとの領主や主人の申告があれば,これに人返し令書を交付して,欠落先に追及し還住させることを保障し,これを〈国法〉として重視した。
執筆者: 近世に入っても,小百姓や隷属的な農民が,逃散に至らぬ小規模な抵抗の形態として村外,領外に逃亡することがしばしば行われた。初期の領主禁令では,このような欠落人を,多く走(はしり)百姓,走りものなどと称し,厳しい処分規定を設けている。欠落の類語に,家出,出奔,立退(たちのき),風与出(ふとで)などがあるが,中期以降は,階層,理由を問わず,これら居住地からの失踪行為全般を意味する用語として,欠落が広く使用された。欠落人についての規則も,中期以降はより詳細になる。幕領の例では,欠落人が出るとまず犯罪との関係が吟味され,関係ない場合は六切(きり)尋方といって30日ずつ6回までの期限付捜索義務が親類,兄弟等に課される定めであった。180日を経て探し出せないときは処罰を受け,さらに永尋(えいたずね)(無期限捜索義務)が課せられるか,あるいは帳外(ちようはずれ)(戸籍からの抹消),旧離(きゆうり)(久離。親族関係の断絶)の願い出にもとづいて,永尋赦免のうえ,跡株相続が認められる場合もあった。
執筆者:

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普及版 字通 「欠落」の読み・字形・画数・意味

【欠落】けつらく

かける。〔拾遺記、一、軒轅皇帝〕金を以てを鑄る。皆銘題あり。昇遐(しやうか)(上天)の後にんで、群臣其の銘をるに、皆上古の字、滅して缺するもの多し。

字通「欠」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「欠落」の意味・わかりやすい解説

欠落【かけおち】

駆落とも記。中世,とくに戦国時代においては人々が軍役・貢租(こうそ)の負担や戦禍から逃れて他領に出奔してゆくえをくらますことをいった。江戸時代にも広く無断でその住居を去り行方不明になることをいい,為政者は欠落防止のため厳罰をもって臨んだ。武士にあっては当主の欠落は家断絶,親類縁者の場合も相続に影響した。庶民にあってはのちには郷村,五人組の連帯責任にするなど巧妙な制度をつくって対処した。なお相思の男女がひそかに他郷に逃げるのも駆落といったが,現在では一般にこのことをさす。→人返し
→関連項目無宿嫁盗み

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「欠落」の意味・わかりやすい解説

欠落
かけおち

近代法における失踪,律令制における逃亡に比当される近世法の用語。町方,村方に欠落人が生じると,町村の役人はこれを管轄官庁に届け出る。官庁は,親類町村役人へ,たずね出しを命じ,180日を経て発見しえない場合には,永尋 (ながたずね) の命を下した。永尋は,捜索人の懈怠を責めるものであるが,裏面において,今日の失踪宣告とほぼ同様の効果を生ぜしめるもので,これによって,欠落人の財産は相続人に移転された。なお,以上の制度は明治初期においても,「逃亡尋」と名を変えて,日限その他,そのままに行われていた。ちなみに,江戸期の奉公人証文にも,「欠落」の文字がしばしばみえるが,これは奉公人が契約期間満了前に失踪することである。そして,この場合には,請け人が弁償義務を負うのが通例であった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「欠落」の解説

欠落
かけおち

中世,とくに戦国期の民衆が軍役・租税・戦禍などからのがれるため,村外や領外に行方をくらますこと。大規模な抵抗の形態である逃散(ちょうさん)とはちがい,個別的・分散的なものをいう。近世には,失踪(しっそう)の場合,家出・逐電(ちくでん)・出奔(しゅっぽん)・立退(たちのき)・風与出(ふとで)などを問わず,欠落として扱われた。所轄の役所が欠落人の親類や役人らに命じ,30日を限って捜索させ,その日限は合計180日まで延期された。

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世界大百科事典(旧版)内の欠落の言及

【尋】より

…江戸時代,犯罪や貧困などの原因で逃亡・失踪(欠落(かけおち))した者のゆくえを捜索すること。親族および町村役人に捜索義務が課されるが,被捜索者(欠落人,御尋者(おたずねもの))と主従・親族・師弟関係で目下にあたる者には申し付けなかった。…

【逃散】より


[中世]
 荘園制下の農民が,その家屋敷・田畠をすて荘外に逃亡することで,領主に対する抵抗の一形態。逃散には,個々の農民が行うもの(欠落(かけおち))と,集団で行うものとがあったが,惣村の成立以後,後者は自覚的な抵抗形態となり,逃散は単なる逐電と区別されるようになった。荘園制下の農民は,年貢課役の減免,非法代官の罷免などの要求を通すため,しばしば一揆を結成し,強訴(ごうそ)を行ったが,なお要求が認められない場合,最後の手段として全員が荘外に逃亡する逃散を行った。…

【人返し】より

…(1)日本の中世後期,在地領主層や戦国大名のとった欠落(かけおち)者の連れ戻し策。中世後期の社会を通じて広く現れた武家奉公人,百姓,下人などの欠落は,在地領主や土豪の支配や経営の基盤を不安定にしたばかりでなく,逃亡した領民の他領からの連れ戻し問題は,在地領主や土豪相互間の深刻な対立を引き起こす原因ともなった。…

※「欠落」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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