日本中世とくに戦国時代において,人々が軍役・貢租の負担や戦禍から逃れるため他領に流亡することを欠落といった。欠落人は被官(下級武士)から農民諸階層にわたった。農民層の場合,村ぐるみの組織的な逃散(ちようさん)とくらべて,とくに小百姓,下人など隷属的な階層の個別・散発的な家族ぐるみの欠落が著しく,欠落の行先は近隣の農村よりは他領の宿場や城下,門前など遠く離れた町場の例が数多く知られる。より自由な都市的な場への流入とみることができよう。これらの欠落人の帰属をめぐって,本主と他領との間で紛争が起こることもしばしばであった。戦国大名は,欠落が軍役体系や農村支配の底辺を動揺させ,領内の対立紛争を引き起こす原因をなすものであったことから,欠落対策をとり,もとの領主や主人の申告があれば,これに人返し令書を交付して,欠落先に追及し還住させることを保障し,これを〈国法〉として重視した。
執筆者:藤木 久志 近世に入っても,小百姓や隷属的な農民が,逃散に至らぬ小規模な抵抗の形態として村外,領外に逃亡することがしばしば行われた。初期の領主禁令では,このような欠落人を,多く走(はしり)百姓,走りものなどと称し,厳しい処分規定を設けている。欠落の類語に,家出,出奔,立退(たちのき),風与出(ふとで)などがあるが,中期以降は,階層,理由を問わず,これら居住地からの失踪行為全般を意味する用語として,欠落が広く使用された。欠落人についての規則も,中期以降はより詳細になる。幕領の例では,欠落人が出るとまず犯罪との関係が吟味され,関係ない場合は六切(きり)尋方といって30日ずつ6回までの期限付捜索義務が親類,兄弟等に課される定めであった。180日を経て探し出せないときは処罰を受け,さらに永尋(えいたずね)(無期限捜索義務)が課せられるか,あるいは帳外(ちようはずれ)(戸籍からの抹消),旧離(きゆうり)(久離。親族関係の断絶)の願い出にもとづいて,永尋赦免のうえ,跡株相続が認められる場合もあった。
執筆者:安藤 正人
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中世,とくに戦国期の民衆が軍役・租税・戦禍などからのがれるため,村外や領外に行方をくらますこと。大規模な抵抗の形態である逃散(ちょうさん)とはちがい,個別的・分散的なものをいう。近世には,失踪(しっそう)の場合,家出・逐電(ちくでん)・出奔(しゅっぽん)・立退(たちのき)・風与出(ふとで)などを問わず,欠落として扱われた。所轄の役所が欠落人の親類や役人らに命じ,30日を限って捜索させ,その日限は合計180日まで延期された。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…江戸時代,犯罪や貧困などの原因で逃亡・失踪(欠落(かけおち))した者のゆくえを捜索すること。親族および町村役人に捜索義務が課されるが,被捜索者(欠落人,御尋者(おたずねもの))と主従・親族・師弟関係で目下にあたる者には申し付けなかった。…
…
[中世]
荘園制下の農民が,その家屋敷・田畠をすて荘外に逃亡することで,領主に対する抵抗の一形態。逃散には,個々の農民が行うもの(欠落(かけおち))と,集団で行うものとがあったが,惣村の成立以後,後者は自覚的な抵抗形態となり,逃散は単なる逐電と区別されるようになった。荘園制下の農民は,年貢課役の減免,非法代官の罷免などの要求を通すため,しばしば一揆を結成し,強訴(ごうそ)を行ったが,なお要求が認められない場合,最後の手段として全員が荘外に逃亡する逃散を行った。…
…(1)日本の中世後期,在地領主層や戦国大名のとった欠落(かけおち)者の連れ戻し策。中世後期の社会を通じて広く現れた武家奉公人,百姓,下人などの欠落は,在地領主や土豪の支配や経営の基盤を不安定にしたばかりでなく,逃亡した領民の他領からの連れ戻し問題は,在地領主や土豪相互間の深刻な対立を引き起こす原因ともなった。…
※「欠落」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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