改訂新版 世界大百科事典 「松島遊廓疑獄」の意味・わかりやすい解説
松島遊廓疑獄 (まつしまゆうかくぎごく)
大阪市の遊廓移転にからむ収賄事件。市の中央部にある松島遊廓を都市計画と風紀対策のうえから飛田遊廓にならって移転せざるをえなくなっているとき,豊国土地会社,万成信託会社が,大阪府西成郡歌島村ほか数ヵ所に移転させ地価の騰貴をあおり巨利をえようと画策した。1924年12月,万成信託社長小久保信太郎らは,立憲政友会幹事長岩崎勲,ついで憲政会総務の箕浦勝人らにその運動の斡旋を依頼し,岩崎らもこれを了承した。その業者から岩崎は20万円,箕浦は5万円を収賄したが,26年1月,この件を暴露する文書が政界,報道関係に配布されて大問題となり,衆議院でも取り上げられ,岩崎,箕浦らは起訴され,この年の11月,首相若槻礼次郎も尋問を受けるほどに事件の波紋は広がった。27年大阪地裁は政党幹部の箕浦ら3人に無罪,業者と政界人の仲介をつとめた弁護士平渡信に懲役1年6ヵ月の判決を下した。なお,岩崎は病死により公訴権が消滅した。
執筆者:金原 左門
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報