枉惑(読み)オウワク

デジタル大辞泉 「枉惑」の意味・読み・例文・類語

おう‐わく〔ワウ‐〕【×枉惑】

[名・形動ナリ]道義に反する言動によって人を惑わすこと。また、そのさま。
「いかなる―のやっこ、人たばかりて物取らんとて構へ事するならん」〈今昔・一四・四四〉

わわく【×枉惑】

おうわく(枉惑)」の音変化。
「―のやつばらの智者げなれば」〈日蓮遺文・智妙房御返事〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「枉惑」の意味・読み・例文・類語

おう‐わくワウ‥【枉惑・抂惑・誑惑】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 )
  2. ( ━する ) 道に外れた事をして人を惑わすこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「若人労而得小物。誑惑取用之者。受此報」(出典往生要集(984‐985)大文一)
    2. [その他の文献]〔法華経‐勧持品〕
  3. ずうずうしく、ずるいこと。また、そのさま。横着
    1. [初出の実例]「Vǒuacunna(ワウワクナ)、または、ワウチャクナ〈訳〉道理に外れたことや、ごまかし、でたらめをする傲慢で横柄なこと」(出典:日葡辞書(1603‐04))

枉惑の語誌

「誑」はキャウで本来ワウの音はないが、広くワウワクと読みならされていたものと思われる。「観智院本名義抄」では「誑」「狂」(同じく「いつわる」意)ともに和音ワウとある。おそらく意味と音が一部重なりあう「誑」「抂」「枉」「狂」「」等が混同を起こし、早くからワウとして定着したと考えられる。


わわく【枉惑・誑惑】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 ) ( 「おうわく(枉惑)」の変化した語 ) 道にはずれたことをして人を惑わすこと。根拠のないことを言って人をたぶらかすさま。また、道理のないことや、理由のないことにもいう。わやく。
    1. [初出の実例]「わわくに物くるるは、つみにて候か。答。つみにて候」(出典:百四十五箇条問答(1201頃))
    2. 「わわくのやつばらの智者げなれば」(出典:日蓮遺文‐智妙房御返事(1280))

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