日本大百科全書(ニッポニカ) 「柳毅伝」の意味・わかりやすい解説
柳毅伝
りゅうきでん
中国、中唐の小説。作者は隴西(ろうせい)の李朝威(りちょうい)(生没年、経歴不詳)。官吏登用試験に落第した柳毅は、湘江(しょうこう)のほとりの故郷に帰る途中、不貞な夫と邪険な姑(しゅうとめ)に追い出された竜女に会う。彼女の伝言を携え洞庭湖の竜宮に竜女の父洞庭君を訪ねる。洞庭君の弟銭塘(せんとう)君は激怒して竜女のために復讐(ふくしゅう)する。毅は多くの財宝をもらって帰り、楊州(ようしゅう)で大商人となり、金陵(南京(ナンキン))で范陽(はんよう)の盧(ろ)氏と結婚するが、実は彼女は竜女の化身であって、のちに2人とも洞庭湖に行き神仙となるという筋。元の尚仲賢(しょうちゅうけん)の『柳毅伝書』、明(みん)の許自昌(きょじしょう)の『橘浦記(きっぽき)』などの戯曲の題材となり、いまも洞庭の君山(くんざん)には遺跡の柳毅井がある。
[内山知也]