朝日日本歴史人物事典 「栗原イネ」の解説
栗原イネ
生年:嘉永5.3.5(1852.4.23)
明治期の実業家。下野国(栃木県)安蘇郡植野村で農業のかたわら反物・荒物商を営んだ栗原和市とウタの長女。父の事業の失敗で幼少より機織りなどして生計を助ける。3度目の夫加藤庄平と,先夫の子幸八とで上京。無一文から賃機をはじめ,明治17(1884)年,33歳のとき織機7台,織り子数人で,栗原稲工場(のち大同毛織,現ダイドーリミテッドの母体)を設立。翌18年離婚。女手ひとつで仕事に打ち込み「巴御前」「機の神様」などの異名を持ち,染色や織物に創意工夫をし,斬新な織物を作って事業を拡張した。町工場が中小企業となり大企業へと発展する過程は,日本近代工業発達史そのものである。<参考文献>大同毛織資料室編『糸ひとすじに』
(山内陽子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報