栗隈(読み)くりくま

百科事典マイペディア 「栗隈」の意味・わかりやすい解説

栗隈【くりくま】

山城国久世(くせ)郡の古代地名(郷名)で,現京都府宇治市の大久保・広野一帯をさした。《日本書紀仁徳天皇12年10月条に〈大溝(おおうなで)を山背(やましろ)の栗隈県(あがた)に掘りて田に潤く〉とみえ,ほぼ同様の記事が推古天皇15年条にも重出する。同書には〈栗隈首徳万〉〈栗隈連〉など当地名を負った豪族がみえ,古くから開けた地であったことをうかがわせる。平安時代に入ると遊猟地として〈栗隈(前)野〉〈栗隈山〉が史書にみえるが,882年農業の妨げになるとして遊猟が禁止されている。宇治市南東部の丘陵を栗隈山(栗駒山)と通称し,そこに鎮座する神明神社は〈栗隈(栗子)神明〉ともよばれる。古代の栗隈の遺称であろう。

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改訂新版 世界大百科事典 「栗隈」の意味・わかりやすい解説

栗隈 (くりくま)

京都府南部の宇治市,城陽市周辺を指すと思われる古代地名。《日本書紀》には仁徳朝と推古朝に大溝が開削されたとある。また栗隈県の名も見られ,この地方の豪族が早くから大和朝廷支配下に入って開発を担当したらしい。平安時代初期には遊猟地として栗隈(前)野の名が見え,以後も付近一帯の丘陵の栗駒山が戦乱での争奪対象地としてしばしば文献に記されている。いま宇治市の神明神社は栗子天神とも呼ばれ,古代栗隈の故地であろうと思われる。
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