楯山登(読み)たてやまのぼる

改訂新版 世界大百科事典 「楯山登」の意味・わかりやすい解説

楯山登 (たてやまのぼる)
生没年:1876-1926(明治9-昭和1)

大阪の地歌・箏曲家。本名増田重蔵。楯井検校門下の楯沢勾当(こうとう)の弟子明治新曲の代表者で,左手で和音式伴奏を行う〈ツルシャン物〉の作曲で有名になり,以後ツルシャン物は全国的に流行する。和歌にも長じ,自作の詞も多い。代表曲に《時鳥(ほととぎす)の曲》《金剛石》がある。門下に楯繁一栄(1886-1973),楯城護(1904-84)がおり,大阪における地歌・箏曲の伝承系統の一つである中筋一派である楯筋の芸系を継承している。
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朝日日本歴史人物事典 「楯山登」の解説

楯山登

没年:大正15.5.22(1926)
生年明治9.4(1876)
明治大正期の大阪の地歌箏曲家。本名増田重蔵。5歳ごろに失明,8歳のとき楯崎検校に入門。師の没後,楯沢勾当増一に師事。明治22(1889)年楯山栄寿を名乗る。大正2(1913)年まで私立大阪盲唖院(大阪市立盲学校)教諭。明治期に特に大阪で盛んに作曲された新しい箏曲(明治新曲)の代表的作曲者のひとりで,左手の和音伴奏を用いたいわゆる「ツルシャン物」といわれる曲の作者として知られる。和歌をよくし,自作の詞の作曲も多い。代表作に「時鳥の曲」「金剛石」「凱旋ラッパの調べ」「新巣籠」などがある。

(千葉潤之介)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「楯山登」の解説

楯山登 たてやま-のぼる

1876-1926 明治-大正時代の地歌・箏曲(そうきょく)家。
明治9年4月生まれ。生田流。楯崎検校(けんぎょう),楯沢勾当(こうとう)にまなび,明治22年楯山栄寿を名のる。明治新曲の代表的作曲家で,左手の和音伴奏をもちいた曲は「ツルシャン物」とよばれた。大正15年5月22日死去。51歳。大阪出身。本名は増田重蔵。代表作に「凱旋ラッパの調」「時鳥(ほととぎす)の曲」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「楯山登」の意味・わかりやすい解説

楯山登
たてやまのぼる

[生]1876
[没]1926
箏曲家。本名増田重蔵。初名栄寿。楯崎検校と楯沢勾当に師事。 1893年以降作曲活動をし,大阪の明治新曲運動を代表。『凱旋ラッパの曲』『金剛石』『水は器』『新巣籠』『鶴亀ほか,『時鳥の曲』以下『楯山十二曲』など多作家。『時鳥の曲』は,特にその左手の重音技巧から「ツルシャン物」と呼ばれ,流行した。

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