構造・機能

内科学 第10版 「構造・機能」の解説

構造・機能(副腎髄質)

 副腎への血流は,大動脈,下横隔膜動脈,腎動脈などから流入し,被膜内で分枝して,被膜動脈,皮質動脈,髄質動脈を形成する.皮質動脈は副腎皮質内でさらに分枝して毛細血管となり,皮質を灌流した後髄質の毛細血管に流入する.髄質動脈は皮質を通過した後,髄質内で毛細血管網を形成して髄質を灌流する.これらは髄質内で互いに連絡して髄質静脈を形成し,最後には合流して副腎静脈となる.左副腎静脈は左腎静脈に,右副腎静脈は直接大静脈に注ぐ.副腎髄質の毛細血管(静脈洞)は有窓で,その周囲に副腎髄質細胞が配列し,細網線維により保持されている.このような血液供給により,副腎髄質には常に皮質から分泌された高濃度のグルココルチコイドが灌流している. 副腎髄質は,主として胸髄(T5〜T9)由来の交感神経節前ニューロンと迷走神経由来の副交感神経ニューロンにより,脳幹にある自律神経中枢の支配を受けている.これらは被膜で神経叢を形成し,皮質を経て髄質細胞とシナプスをなす.このように,副腎髄質細胞は交感神経節後ニューロンが発生の間に軸索と樹状突起を失い,分泌性の細胞になったものと見なすこともできる.
 副腎髄質細胞は,重クロム酸カリウムで処理するとカテコールアミンの還元作用により胞体が褐色に染まるため,クロム親和性細胞(chromaffin cell)とよばれている.同様の細胞は交感神経節や傍神経節にも存在し,副腎外クロム親和性細胞とよばれる.光顕上は卵円形の比較的大型の細胞で,クロマチンに乏しい大型の核と好塩基性の細胞質を有する.電顕では胞体内に周囲を一重の膜で囲まれた直径150~350 nmの電子密度の高い顆粒が多数認められる(図12-7-1).これらはカテコールアミン顆粒(クロム親和性顆粒)とよばれ,カテコールアミンの生合成,貯蔵,分泌に関与している.副腎髄質はアドレナリンノルアドレナリンおよび各種の神経ペプチドペプチドホルモンを分泌する.アドレナリンとノルアドレナリンは,それぞれ異なる細胞から分泌される.多数を占めるアドレナリン分泌細胞は比較的電子密度の低い小さな顆粒を有し,ノルアドレナリン分泌細胞はより電子密度が高く大きな顆粒を含む.副腎静脈に分泌されるカテコールアミンの80%はアドレナリンである.循環血液中のノルアドレナリンは大部分が交感神経終末から放出されたものであるが,アドレナリンはほとんどが副腎髄質由来である.[荒井宏司]
■文献
Kliegman RM, et al: Nelson Textbook of Pediatrics, 19th ed, pp1753-1757, Elsevier Saunders, Philadelphia, 2011.
Maris JM: Recent advance in neuroblastoma. N Engl J Med, 362: 2202-2211, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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