ホルモンの一種で,ノルエピネフリンnorepinephrineとも呼ぶ。生理活性アミン,カテコールアミンの一種。副腎髄質の腺細胞や神経細胞で生合成される。L-チロシンからドーパ,ドーパミンを経て合成される。アミノ基へのメチル基転移反応によりアドレナリンを生じる。副腎髄質から分泌されたものはアドレナリンに類似したさまざまの作用をもつ。カテコールアミン類はバナナなどの植物にも大量に含まれているが,その生理的機能は不明である。オイラーU.S.von Eulerによってこの物質が哺乳類の脳に分布することが見いだされた(1946)。その後の膨大な研究から,現在ノルアドレナリンは交感神経系の化学伝達物質として,生体の情報伝達に重要な役割を果たしていることがしだいに明らかになりつつある。ノルアドレナリンは交感神経内で生合成され,神経終末のシナプス小胞に貯蔵されている。交感神経の刺激に応じて終末から放出され,標的器官に交感性の反応を引き起こす。この反応はノルアドレナリンの直接投与によって引き起こされるなど,神経伝達物質の規準をみたしていることが示されてきた。現在,蛍光組織化学の進歩によって,ノルアドレナリン作動性ニューロンの脳内分布がしだいに明らかになってきている。
執筆者:大隅 良典
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…また,アドレナリンの作用は交感神経が興奮したときの効果ときわめてよく似ているところから,かつては交感神経の興奮に際して神経終末からアドレナリンが遊離されるものと考えられたことがあり,アドレナリン作動性神経adrenergic neuronという語が生まれた。その後,交感神経終末から興奮を伝達する物質として遊離されるのはノルアドレナリンであることが明らかとなったが,アドレナリン作動性という言葉は現在も広く使われており,伝達物質としてノルアドレナリンないしアドレナリンを放出する神経をアドレナリン作動性神経と呼ぶ。アドレナリンの薬理作用は一過性である点に特色がある。…
…排出が遅く蓄積性を示すものもある。
[カテコールアミン類]
アドレナリンなど分子構造にカテコールをもったアミンをカテコールアミンというが,本来は副腎から分泌される内因性のホルモンであるアドレナリンや,交感神経の伝達物質であるノルアドレナリンは強心作用をもつ。これらの物質は体内で速やかに分解されるので作用は短時間である。…
…1本の節前繊維は終末部で多数の枝分れを示し,交感神経節内における多数の節後ニューロンに対してシナプス伝達を行う。 交感神経系の節前ニューロンはアセチルコリン作動性であり,節後ニューロンはノルアドレナリン作動性である。したがって交感神経節内でシナプス伝達がなされるとき,アセチルコリンが節前繊維末端から放出されて節後ニューロンの興奮が引き起こされるのであるが,その結果としてのノルアドレナリン放出も少し遅れて起こり,これが節前繊維の活動を抑制させることが知られている。…
…交感神経興奮薬,交感神経遮断薬,副交感神経興奮薬,副交感神経遮断薬,自律神経節興奮薬,自律神経節遮断薬などが含まれる。
[交感神経興奮薬sympathomimetic agent]
交感神経の興奮は,興奮によって神経の終末から放出されるノルアドレナリン(ノルエピネフリン)が,効果器細胞上のアドレナリン作動性受容体と結合することによって伝達される。アドレナリン作動性受容体は,アルファ受容体(α受容体)とベータ受容体(β受容体)とに分類されており,器官によって両者の比率に差があると考えられる。…
…すなわち,皮質は中胚葉性の体腔上皮に由来し,髄質は外胚葉性の神経に由来し,胎児期に皮質原基内に髄質原基が侵入して一つの器官としての副腎を形成する。皮質からは,電解質や糖代謝に関与する多種類の皮質ホルモンや男性ホルモンが,髄質からは,アドレナリンやノルアドレナリンが分泌される。肉眼的にも,新鮮な副腎の切断面では,皮質は脂肪のためにやや黄色みを帯び,髄質は赤褐色であり,容易に区別される。…
※「ノルアドレナリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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