化学辞典 第2版 「次リン酸」の解説
次リン酸(塩)
ジリンサン
hypophosphoric acid(hypophosphate)
酸:H4P2O6(161.98).(HO)2(O)P-P(O)(OH)2.ナトリウム塩Na4P2O6・10H2Oの水溶液をH型イオン交換樹脂カラムを通すか,これを複分解でバリウム塩としたのち硫酸と反応させると得られる.式で示されるようなP-P結合をもつ構造の四塩基酸である.pK1 2.22,pK2 2.82,pK3 7.27,pK4 10.03.無水物は斜方晶系の板状結晶.二水和物(無色,斜方晶系)も得られる.融点55 ℃(二水和物),70 ℃(無水物).水溶液中ではアルカリ性では安定であるが,酸性では徐々に分解して(濃塩酸中では速い),オルトリン酸とホスホン酸になる.[CAS 7803-60-3]
塩:アルカリ金属,アルカリ土類金属,アンモニウムなどの塩が知られている.酸イオンは [(O)3P-P(O)3]4-.Naの水素塩Na2H2P2O6は,赤リンとNaClO2またはH2O2とを水溶液中で反応させ,溶液の pH を5.2に調節して六水和物の結晶を析出させる.この結晶は無色の単斜晶系板状晶で,P-P2.19 Å,P-OH1.59 Å,P-O1.50 Å.∠O-P-O102~116°,∠P-P-O106°.室温では安定である.100~110 ℃ で無水物になり,さらに高温では分解する.水溶液は微酸性を示す.徐々に分解してオルトリン酸とホスホン酸との塩になる.また,この水溶液に計算量のNa2CO3を加えた液から,中性塩Na4P2O6,一水素塩Na3HP2O6が,また次リン酸を加えた液から,三水素塩NaH3P2O6がいずれも結晶として得られる.次リン酸およびNa塩は,P-P結合をもつ化合物の合成出発原料として用いられる.また,Naの二水素塩は,ふくらし粉用の酸としても用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報