日本大百科全書(ニッポニカ) 「正四面体構造」の意味・わかりやすい解説
正四面体構造
せいしめんたいこうぞう
regular tetrahedral structure
分子、多原子イオン、結晶などにみられる典型構造の一つ。1874年にオランダのファント・ホッフとフランスのル・ベルによって炭素四面体説として独立に提唱され、以後その他の原子にも適用されることが明らかになった。ダイヤモンド、飽和炭素化合物などでは、一つの炭素原子から伸びる4本の共有結合は、その原子を中心とした正四面体の頂点に向かって伸びる。メタンCH4や四塩化炭素CCl4では、各水素原子あるいは塩素原子の中心を結ぶと正四面体となるが、クロロホルムCHCl3のように4個の原子すべてが等しくはない場合には、分子構造そのものは正四面体にはならない。リンの分子P4では、各リン原子が正四面体の頂点を占める構造となるが、この例では正四面体の中心には原子がない。テトラシアニド(テトラシアノ)水銀(Ⅱ)酸イオン[Hg(CN)4]2-のような錯イオンには、メタンに似た正四面体型構造がみられる。
[岩本振武 2015年8月19日]