日本大百科全書(ニッポニカ) 「歯科助手」の意味・わかりやすい解説
歯科助手
しかじょしゅ
歯科医師の診療に付随する雑務を担当する補助職。歯科医院での受付、器具の清掃や準備、手渡し、石膏(せっこう)などを練る作業、患者の介添えなどをする。歯科衛生士や看護師と違い、国家資格はないため、治療に直結する診療補助はできない。
だれでもできる半面、基本的な歯科知識も必要である。日本歯科医師会は1967年(昭和42)から「認定歯科助手資格制度」を発足させている。各都道府県歯科医師会や民間の専門学校で、歯科臨床、社会保険の実務、文書・物品の管理などの講習を受ければ認定される。この民間資格は3種類で、おもに診療室内の仕事に従事する「乙種第一」(講習は52時間)、事務的な仕事の「乙種第二」(同40時間)、さらに高度な「甲種」(同400時間)がある。「乙種第一」「乙種第二」を合わせて取得する場合は72時間の講習になる。もっとも歴史のある日本歯科医師会の認定歯科助手は約26万人である。
民間資格は前記のほかにもあり、日本歯科助手認定協会、医療福祉情報実務能力協会、民間の通信教育講座などが、一定の講習で歯科助手を認定している。国家資格の歯科衛生士と比べて歯科助手は給与も安く、歯科医師にとって便利な存在である。患者側からは両者の区別がつきにくく、しばしば、歯科医師が歯科助手に治療させ、問題化するケースが毎年のように起きている。2006年(平成18)には、愛知県豊橋市の歯科医師が歯科助手に診療行為をさせ、不正な診療報酬請求をしたとして、保険医取消しの処分などを受けた。
[編集部]