母性喪失症候群(読み)ぼせいそうしつしょうこうぐん(その他表記)maternal deprivation syndrome

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「母性喪失症候群」の意味・わかりやすい解説

母性喪失症候群
ぼせいそうしつしょうこうぐん
maternal deprivation syndrome

情緒剥脱症候群 emotional deprivation syndromeともいう。適切な養育者が家庭内に欠けている場合に起る子供の精神的・身体的発達障害と行動異常をいう。症状としては,小人症精神発達,特に言語発達遅れ,異常行動があげられる。性格としては,孤独,攻撃的,疑い深い,拒否的となる。不活発でおどおどしているが,自分を受入れてくれる人にはまつわりつく。食欲は異常に亢進し,水洗便所の水を飲むような異常行動や常同行動がみられる。母性喪失が生後1年以内に始り,3年以上続くときは,知能や情緒の障害が永久に回復しないといわれている。これらの子供の家庭環境は複雑で,両親の不和・別居離婚アルコール依存症のほか,大家族,私生子などである場合がしばしば認められ,子供は親から隔離され施設に収容されることが多い。しかし,長期の病院や乳児院などの施設収容によっても同様の症状 (→施設病 ) がみられることがあり,この悪循環を断つには養子縁組などの処置が必要となる。

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