コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

知能 ちのうintelligence

翻訳|intelligence

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

知能
ちのう
intelligence

生物学的立場からは新しい環境に対する先天的および後天的な適応可能性と定義され,また心理的機能の面から知覚,弁別,記憶,思考などの知的な諸機能の複合としても定義される。 H.ベルグソンはかつてホモ・サピエンス (理性人) の論理的知性とホモ・ファーベル (工作人) の職人的知性とを分けたが,前者は言語を習得した人間の合理的,論理的知能であり,後者は言語以前の幼児や動物の感覚運動的または実用的知能に対応するとされた。しかし現在では高等な類人猿は手話や図形の配置で意志伝達できることが明らかになっている。知能はある程度までは年齢とともに発達するものと考えられ,知能検査のどの問題にパスしたかによって知能の程度を年齢尺度 (精神年齢 ) で表現し,知能指数IQ知能偏差値によって個人間の比較を行うことが可能になった。しかしこの場合,知能は知能検査によって測定されたものという前提があり (→操作主義 ) ,したがって測定技法の進歩によって知能の概念も変化し,このような検査成績の因子分析的研究によって言語因子,数因子,記憶因子,空間因子,推理因子などが見出され,知能の心理学的構造が解明されつつある。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について | 情報

デジタル大辞泉の解説

ち‐のう【知能/×智能】

物事を理解したり判断したりする力。「―の高い動物」
心理学で、環境に適応し、問題解決をめざして思考を行うなどの知的機能。

出典|小学館デジタル大辞泉について | 情報 凡例

百科事典マイペディアの解説

知能【ちのう】

生活の新しい課題と条件とに対する一般的精神的順応力,言語や記号などを用いて概念のレベルで思考をすすめる能力,また,知識技能経験によって獲得することのできる能力などさまざまな定義がある。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて | 情報

世界大百科事典 第2版の解説

ちのう【知能 intelligence】

知能には,いろいろな定義があるが,3種類に大別できる。第1は,適応力とみる定義で,新しい場面や困難な問題に直面したとき,本能的な方法によらずに,適切かつ有効なしかたで,順応したり解決したりする能力を知能とみなす。第2は,抽象的思考力,推理力,洞察力などの高等な知的能力とみる定義で,言語や記号などを用いて,概念のレベルで思考を進める能力を知能とみなす。第3は,学習能力とみる定義で,知識や技能を経験によって獲得することを可能にする能力を知能とみなす。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

知能
ちのう
intelligence 英語 フランス語
Intelligenzドイツ語

定義

知能には種々の定義があるが、比較的広く受け入れられているものを類型化すると、次の六つに大別される。
(1)抽象的思考力を重視するもの
(2)学習する能力とみなすもの
(3)新しい環境に対する適応性を強調するもの
(4)包括的に定義しようとするもの
(5)操作的定義
(6)情報処理の能力
(1)はターマンの「抽象的思考を行いうる程度に比例して、その人は知能的である」という定義や、スピアマンが認識の原理として掲げた経験の認知、関係の抽出、相関者の抽出の三つのなかの、関係の抽出と相関者の抽出を知能の本質とみた見解によって代表される。(2)はディアボーンW. F. Dearborn(1878―?)の「学習する能力、または経験によって獲得していく能力である」という定義によって代表される。(3)の定義の代表としてはシュテルンの「個人が思考を新しい要求に意識的に応じさせる一般的能力であり、新しい課題と生活に対する一般的精神的順応力である」という定義が代表としてあげられる。(4)としてはストッダードGeorge Dinsmore Stoddard(1897―1981)の「困難性・複雑性・抽象性・経済性・目標への順応性、社会的価値、独創の出現を特徴とする諸活動を遂行し、かつ、精力の集中と情緒的な力への抵抗を必要とする条件下において、それらの諸活動を持続することができる能力」という定義や、ウェックスラーDavid Wechsler(1896―1981)の「目的的に行動し、合理的に思考し、その環境を効果的に処理する個人の総合的・全体的な能力」という定義があげられる。(5)はボーリングの「知能検査によって測定されたもの」によって代表される。(6)は1970年代以降発展してきた認知心理学に基づく考え方で、キャンベルJ. P. Campbellは、「情報処理課題を含む仕事の遂行にみられる個人差を決定する要因が一般的能力である」(1990)としている。以上に紹介した定義はいずれも知能の一面をよく示しているが、それぞれの欠点も指摘されており、いずれも完全なものとはいいがたい。1980年代以降の情報・通信技術の革命的発展に伴い、コンピュータにおける知的情報処理システムについての研究が進んでいるが、これらについては「人工知能」「認知科学」の項目を参照。[肥田野直]

知能の分類

知能を系統発生的にとらえたビオーG. Viaudは、人間と動物の行動を本能的行動と知的行動に分け、知的行動をさらに感覚運動的知能(実用的知能)と概念的・論理的知能に区分した。一方ヘッブは個体発生の見地から知能Aと知能Bとに分け、前者を知的機能の生得的潜在力とし、後者をその潜在力が環境との相互作用の結果として実現する範囲とした。また、教育心理学者ソーンダイクは具体的知能、抽象的知能、社会的知能の三つに分類した。[肥田野直]

知能の因子と構造

多数の知能検査の結果の間の関係を解明する因子分析的研究から多くの学説が生まれた。スピアマンは一般知能因子(g)と各検査に固有な特殊因子(s)からなる二因子説を唱えた。サーストンはいくつかの群因子と特殊因子からなるとする多因子説を提唱し、基本的群因子として空間、知覚、数、言語、記憶、語の流暢(りゅうちょう)さ、および推理の7因子をあげた。
 スピアマンの一般知能因子の説を発展させたバーノンP. E. Vernon(1905―?)は、一般因子、群因子、特殊因子の階層的関係によって説明しようとする。検査は、それぞれの特殊因子のほかに、いくつかの検査に共通する小群因子をもつ。小群因子は大群因子を共有する。大群因子には言語的・数的・教育的因子(v:ed)と機械的・空間的・運動的因子(k:m)の二つがある。そして、この大群因子に共有される高次の因子として一般因子がある。
 階層説をさらに発展させたのはキャロルJohn B. Carroll(1916― )の三層理論(1993)である。彼は1927年以降60年間に発表された460余りの因子分析的研究を再分析して、一般因子、大群因子にあたる8因子、小群因子にあたる69の因子を得た。大群因子としては流動性知能、結晶性知能、一般的記憶と学習、視知覚、聴知覚、記憶想起力、認知速度、情報処理速度があげられている。
 一方、キャッテルは、大群因子にあたる因子として流動的知能(Gf)と結晶的知能(Gc)をあげている。前者は新しい場面への適応に関与するもので、知覚的因子や空間的因子などを含む。後者は経験の結果として形成されるもので、言語的因子などが含まれる。このGf-Gc理論を修正したホーンJ. L. HornとノールJ. Nollの理論(1997)では、流動性推理、文化適応による知識、短期の把握・保持、長期記憶から想起する流暢さ、視覚的処理、聴覚的処理、処理速度、正しい判断の速度、量的知識の9種の能力があげられている。
 ギルフォードの知能構造(SI)モデルは内容、所産、操作の三次元を立方体として表したもので、120の因子の関係を説明している。ただし、このなかには未確認の因子も含まれている。なお、操作のなかの発散的思考は創造性に特有なもので、これを知能の一部として位置づけているのである。[肥田野直]

拡張された知的能力の理論

知能検査のみならず、さまざまな分野で功績のあった者や脳損傷者の研究、さらに種々の文化的背景を考慮した新しい知的能力の理論が1980年代に現れた。その一つはガードナーHoward Gardner(1934― )の多知能理論theory of multiple intelligences(1983)である。彼は知的能力を環境の文脈のなかで幅広くとらえ、言語的知能、論理的・数学的知能、空間的知能、身体的・運動的知能、音楽的知能、対人的知能、個人内知能に分類し、さらに1998年自然主義的知能naturalist intelligenceを加えている。他の一つはスターンバーグR. J. Sternberg(1949― )の鼎立(ていりつ)理論(三頭理論)triarchic theory(1985)である。これはコンポートネント理論、経験理論、文脈理論の三本柱からなる。コンポートネント理論は流動的知能や結晶的知能など3種類の情報処理過程を扱う。経験理論は知的能力と経験との関係を扱う。文脈理論は社会文化的文脈によって知的行動がいかに規定されるかを明らかにするものである。[肥田野直]

知能の遺伝的要因

双生児研究は一卵性双生児間の知能の相関が高く、二卵性双生児、兄弟姉妹、親子の間ではこれより低いことを明らかにしている。これは、遺伝的要因の存在を証明するものである。200以上の研究成果を総合したブチャードT. J. BouchardとマギューM. McGueによれば、対間の相関係数の平均は同じ環境で育った一卵性双生児では86、異なる環境で育ったものは72、同じ環境で育った二卵性双生児は60、同じ環境で育った同胞(兄弟姉妹)は47、同じ環境で育った実子と養子では29となっている。[肥田野直]

知能と環境的要因

乳・幼児期の環境が知能の発達に大きな役割を果たすことは否定できない。特殊な例であるが、社会的に隔離された環境に育てられた子供は知能を含めたさまざまな機能の発達が阻害されたという事例が、国内外で報告されている。環境要因のなかでもとくに母子分離(母親剥奪(はくだつ))の影響が大きいといわれている。このような場合、環境条件の改善によって発達の遅れを回復した事例は多い。しかし環境条件を良好にすれば知的発達が促進できるとはかならずしもいえない。たとえば恵まれない環境の幼児に対してアメリカで試みられた補償教育の効果は、若干の例外を除き小学校入学後はほとんど残らなかったという。
 世代ごとに平均身長などが増加し、性機能が早熟化する現象はヨーロッパやわが国で確認されている。この現象は発達加速現象accelerationとよばれるが、知能検査の結果についても同様な傾向がフラインJ. R. Flynnによってみいだされた(1984)。このフライン効果も環境的要因の重要性を示唆するものである。[肥田野直]

知能の発達

知能検査の結果を年齢別に比較すると、16歳から20歳の間に頂点に達し、それから低下する曲線が描かれる。機能別にみると、知覚の速さや空間的判断力は早く頂点に達し、言語的能力は20歳後半に頂点に達するが、その減退も緩慢である。ただし、個人差も大きく、知的優秀者は30歳を過ぎても上昇している例がある。[肥田野直]

知能指数の恒常

知能検査の結果として得られる知能指数は、小学校2年生以後になるとかなり安定する。たとえば、小学校2年と中学校3年の検査成績を比較した狩野広之(かのうひろし)(1904―90)の研究では、知能指数の差がプラスマイナス5以内の者が4割あり、16以上の差を生じた者は1割5分にすぎなかった。しかし、乳・幼児期の検査結果はかなり変動する。その反対に20歳以上になると10年以上先の結果をかなり正確に予測できる。[肥田野直]
『上武正二・辰野千寿著『知能の心理学』(1968・新光閣書店) ▽肥田野直編『講座心理学9 知能』(1970・東京大学出版会) ▽上出弘之・伊藤隆二著『知能』(1972・有斐閣) ▽坂元昂編『現代基礎心理学7 思考・知能・言語』(1983・東京大学出版会) ▽湯川良三編「知能と創造性」(『新・児童心理学講座4』所収・1993・金子書房) ▽佐藤達哉著『知能指数』(講談社現代新書)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

世界大百科事典内の知能の言及

【知識人】より

…ふつう,知識人という場合の知識は,intelligenceではなくて,intellectを指す。すなわち,intelligenceとは,それぞれの学問や芸術において,すでに正当化されている認識パラダイムを遵守し,その規範的枠組み内部で業績や〈生産性〉を追求する知的能力であり,そのかぎりにおいて〈把握,操作,再調整,整理などをこととする〉精神の一側面である。…

【理性】より

…次に悟性という訳語は81年にはunderstandingに当てられ,明治30年代以来ドイツ語のVerstandの訳語でもある(1885年には〈理会力〉,96年には〈解性〉がVerstandの訳語であった)。intellectの訳語は,1881年には〈智力〉,明治30年代から〈知性〉〈知能〉が加わり,明治40年代の末から〈知性〉に定着する一方,〈知能〉をintelligenceに当てる用法が増す(1886年に中江兆民はintelligenceを〈智〉〈智の機能〉と訳した)。他方,intelligenceは明治・大正期以来〈叡智〉〈叡知〉の訳語があり,大正期には超自然界・叡知界の認識能力としてのラテン語intelligentiaが〈叡知〉と訳された。…

【理性】より

…次に悟性という訳語は81年にはunderstandingに当てられ,明治30年代以来ドイツ語のVerstandの訳語でもある(1885年には〈理会力〉,96年には〈解性〉がVerstandの訳語であった)。intellectの訳語は,1881年には〈智力〉,明治30年代から〈知性〉〈知能〉が加わり,明治40年代の末から〈知性〉に定着する一方,〈知能〉をintelligenceに当てる用法が増す(1886年に中江兆民はintelligenceを〈智〉〈智の機能〉と訳した)。他方,intelligenceは明治・大正期以来〈叡智〉〈叡知〉の訳語があり,大正期には超自然界・叡知界の認識能力としてのラテン語intelligentiaが〈叡知〉と訳された。…

※「知能」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

知能の関連キーワードアーティフィシャルインテリジェンススーパーインテリジェンスプロダクションシステムインテリジェント材料ナレッジエンジニアビネーシモン検査法人工知能システムメンタル・テストメンタルテスト白痴美・白癡美知能ロボットAIシステム知能テストギフテッドアイキューAIチップ流動性知能知恵遅れAI言語肥田野直

今日のキーワード

主婦休みの日

1、5、9月の25日。年3回。株式会社サンケイリビング新聞社が制定。主婦にはリフレッシュ、ほかの家族には家事を提唱する。年末年始、ゴールデンウィーク、夏休みといった忙しい期間の後に設定されている。...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

知能の関連情報