比良八荒(読み)ひらはっこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「比良八荒」の意味・わかりやすい解説

比良八荒
ひらはっこう

比良八講は旧暦2月24日(新暦では3月下旬から4月上旬ごろ)、比良大明神で比叡(ひえい)山の衆徒が法華経(ほけきょう)8巻を8座に講ずる行事である。ちょうどそのころに寒の戻りがあり、琵琶(びわ)湖の湖南では比良山系から吹き降りる強風がたたきつけるようにして吹く。そのため湖上は荒れ、気温は一時下がる。この局地強風を比良八荒という。『琵琶湖哀歌』で有名な四高(現在の金沢大学)ボート部の遭難(1941年4月6日)は、この比良八荒によるものである。この日、前日の雨はあがっていたが、西高東低冬型の気圧配置に戻ったため、湖上は風が吹き荒れて波が高く、今津港を出たボートは急変した天気に木の葉のように翻弄(ほんろう)され、11名が萩(はぎ)の浜(高島市)沖で波間に消えた。

 比良八荒は、比良おろしの時節を限定した一種であるが、この風が吹くときは、比良山系の南東象限において強風となる。しかし山を吹き降りた気流は、湖面で跳ね上がるため、斜線の部分で風は弱くなる。ところがこの気流はふたたび吹き降り、野洲(やす)付近で強風となる。

根本順吉


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百科事典マイペディア 「比良八荒」の意味・わかりやすい解説

比良八荒【ひらはっこう】

琵琶湖西岸に比良山系から吹きおろす強風。比良の八講荒れ,ねわたし(嶺渡し)ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の比良八荒の言及

【風】より

… 比良の八講荒れ(ひらのはつこうあれ)琵琶湖西岸の白鬚神社(比良明神ともいう)では陰暦2月24日から4日間,延暦寺の衆徒が《法華経》8巻を読誦する法会があり,この法会を比良八講という。このころ寒気がぶり返し,比良山地から琵琶湖西岸へ吹き降りる強風を〈比良の八講荒れ〉〈比良八荒(ひらはつこう)〉などという。 星の入東風(ほしのいりこち)陰暦10月ころ吹く初冬の北東風。…

【比良】より

…〈比良暮雪〉は近江八景の一つ。春先に吹きおろす強風を〈比良八荒〉とよんだ。《新古今集》巻二に宮内卿の〈花さそふ比良の山風ふきにけりこぎ行く舟の跡見ゆるまで〉がある。…

【比良山地】より

…武奈ヶ嶽の近くには八雲ヶ原湿原や河川争奪の跡を示す地形があり,湿原にはモリアオガエルなど多種の動物,湿原植物がみられる。冬の北西季節風が吹きおろす比良おろしは〈比良八荒〉とよばれる。近江八景の一つ〈比良の暮雪〉や琵琶湖岸の保養地近江舞子などの景勝に恵まれ,琵琶湖国定公園に含まれている。…

※「比良八荒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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