滋賀県中南部にある市。2004年(平成16)野洲郡野洲町と中主町(ちゅうずちょう)が合併、市制を施行して成立。市域の南部は鏡山(385メートル)や三上(みかみ)(近江富士、432メートル)山がそびえる山地・丘陵地で、北部は西の守山市との境を北流する野洲川や、東の近江八幡市との境を北西流する日野川によって形成された沖積平野が展開し、北端は琵琶(びわ)湖に臨む。市街は南西部、妙光寺山(267メートル)の南西麓、野洲川右岸の扇状地に発達。中央部をJR東海道本線(琵琶湖線)、国道8号が、北部の平野部を国道477号が走る。開発は古く、8基の古墳が国の史跡に指定される大岩山古墳群をはじめ、山麓から平野部にかけて多数の古墳が築造され、大岩山一帯では24基の銅鐸が出土。また、条理の地割も多くみられる。古代には東山道、江戸時代には中山道が通る交通の要衝であった。戦国時代の金森一揆には当地の門徒も参加している。江戸時代には琵琶湖での漁業が盛んで、野洲晒(さらし)は特産として知られた。かつては水田を中心とした農業が主産業であったが、近年は電気機械器具製造業等の工場が進出、また宅地開発が進み、京阪神への通勤者も増加している。大笹原神社(おおささはらじんじゃ)本殿、御上神社(みかみじんじゃ)本殿が国宝に指定されるほか、国の重要文化財も数多い。木部(きべ)の錦織寺(きんしょくじ)は真宗木辺(きべ)派の本山。琵琶湖岸の菖蒲浜(あやめのはま)(あやめ浜)一帯にはビワコマイアミランド(マイアミ水泳場)、マイアミ浜オートキャンプ場などがある。山地部は三上・田上(たなかみ)・信楽(しがらき)県立自然公園に指定され、また、滋賀県希望が丘文化公園のスポーツ施設が整備されている。面積は80.14平方キロメートル、人口5万0513(2020)。
[編集部]
『『野洲町史』(1987・野洲町)』
滋賀県中南部、野洲郡にあった旧町名(野洲町(ちょう))。現在は野洲市の南東部を占める地域。旧野洲町は1911年(明治44)町制施行。1955年(昭和30)篠原(しのはら)、祇王(ぎおう)の2村と合併。2004年(平成16)野洲郡中主(ちゅうず)町と合併、市制を施行して野洲市となる。旧町域は野洲川の東岸に位置し、南東部は鏡山、南部には三上山(みかみやま)と丘陵、北西部には沖積地が広がる。JR東海道本線(琵琶湖(びわこ)線)、国道8号が並行して走る。24個の銅鐸(どうたく)を出土した小篠原(こしのはら)の遺跡をはじめ古代史上注目される史跡が多く、強大な政治権力が存在したと推定しうる。『延喜式(えんぎしき)』の野洲駅も置かれ、古来交通の要地とされ、近世は中山道(なかせんどう)と朝鮮人街道の分岐点にあたった。『更級(さらしな)日記』などに野洲の名が多くみられる。水田農業の町であったが、近年は繊維、食品、薬品工業などが立地し、住宅地化も著しい。国宝の大笹原神社(おおささはらじんじゃ)本殿、御上(みかみ)神社本殿のほか国指定重要文化財が多い。大岩山古墳群は国指定史跡。県立希望が丘文化公園などの文化施設もある。
[高橋誠一]
滋賀県中南部の市。2004年10月中主(ちゆうず)町と野洲町が合体して成立した。人口4万9955(2010)。
野洲市北西部の旧町で,琵琶湖東岸に位置する。旧野洲郡所属。人口1万2109(2000)。全域が日野川,野洲川の形成した三角州にある。米作を中心とした農業が主産業で,古くから近江米の産地として知られるが,近年は野菜,花卉栽培が盛んになっている。木部に真宗木辺派の本山錦織寺,五条に国の名勝に指定された庭園をもつ兵主(ひようず)神社がある。
野洲市中南部の旧町。旧野洲郡所属。人口3万6217(2000)。南部は三上山,鏡山などの丘陵地,北部は西境をなす野洲川が形成した沖積平野からなる。野洲は中山道の宿駅として発達し,浜街道を分岐する交通の要地であった。浜街道は安土(あづち)を経由して鳥居本で中山道と合流する脇往還であるが,江戸時代に朝鮮使節がこの街道を利用したことから,〈朝鮮人街道〉とも呼ばれた。現在はJR東海道本線,新幹線,国道8号線,名神高速道路などが通り,東海道本線の電車基地がある。平野には水田が広がり,条里制の遺構がある。江州(ごうしゆう)米の産地として知られ,圃場整備が行われた。野洲晒(さらし)の伝統をもつ繊維工業のほか,国道8号線沿いを中心に工場が多数進出し,日本IBMなどの大工場もある。小篠原(こしのはら)遺跡からは銅鐸24個が出土し,甲山古墳(史),円山古墳(史)などの古墳も多い。大笹原神社本殿,御上(みかみ)神社本殿は国宝に指定されている。
執筆者:松原 宏
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