日本大百科全書(ニッポニカ) 「民主主義指数」の意味・わかりやすい解説
民主主義指数
みんしゅしゅぎしすう
Democracy Index
世界各国・地域における政治の民主化の度合いや市民生活や報道の自由度を示す指数。イギリスの経済誌『エコノミスト』傘下の調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit)が2006年から毎年(2010年までは隔年)発表している。60の指標を「選挙プロセスと多元性」「政府の機能」「政治への参加」「政治文化」「市民の自由度」の五つの部門に分類し、10点満点で指数化して評価したもので、数値が大きいほど民主主義が成熟していることを表す。指数の大きさによって各国・地域を「完全民主主義」(10.00~8.01点)、「欠陥民主主義」(8.00~6.01点)、「混合政治体制」(6.00~4.01点)、「独裁政治体制」(4.00~0点)の四つに区分することで、各国・地域の政治的自由度の向上を促し、独裁の弊害を監視するねらいがある。
2023年2月発表の2022年版(167か国・地域が対象)では、ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)による都市封鎖(ロックダウン)の影響で、世界全体の平均指数は5.29と前年(5.28)と並んで、調査開始以来最低の水準だった。各国・地域別ランキングでは、1位ノルウェー、2位ニュージーランド、3位アイスランド、4位スウェーデン、5位フィンランドと北欧諸国が多く上位を占める。最下位(167位)はアフガニスタンで、166位ミャンマー、165位北朝鮮。アメリカは30位で欠陥民主主義国に区分された。ロシアは146位、中国は156位で、ともに独裁政治体制に区分された。日本は16位で、オーストラリア(15位)、イギリス(18位)並みの評価(完全民主主義国)である。なお、類似指数に、アメリカの人権団体フリーダムハウスの「世界の自由度」(Freedom in the World)、国境なき記者団の「世界の報道の自由度指数」(World Press Freedom Index)、カナダのフレーザー研究所などの「人間の自由度指数」(Human Freedom Index)などがある。
[矢野 武 2023年8月18日]