日本大百科全書(ニッポニカ) 「気候順化」の意味・わかりやすい解説
気候順化
きこうじゅんか
単に順化ともいい、生物がそれまでとは異なる環境に置かれたとき、生活機能はいったん新しい環境下で不安定となるが、時間の経過とともに安定してくる現象をいう。生理学では、実験条件のように比較的単純な条件の変化によって生じる順化acclimationと、気候のように総合的な条件の変化に対応する順化(気候順化acclimatization)とを区別している。
気候順化の例として、温帯に生活していた人が、熱帯への移住に伴ってみられる発汗機能の変化(対熱順化)、平地に生活する人が高山へ登った際に生じる高山病の症状が、2、3週間の滞在によって軽快する高地順化などをあげることができる。また、タンポポなどの平地の植物を山地へ移植すると、矮小(わいしょう)化するなど山地性の特徴を示すようになるが、移植後の時間(5~30年)が長くなると、平地へ再移植をしても、山地で獲得された特徴の残ることが知られている。この場合、山地への適応がある程度遺伝的に固定されたことを示しており、気候順化の意味のなかには、このような遺伝の概念を含めていることもある。
[田中 晋]