低酸素、低圧環境の高地で、血液中の酸素不足が原因で起こる疲労感や頭痛、吐き気、睡眠障害などの症状。標高1800~2500メートル以上で危険性があり、症状には個人差がある。二日酔いに似た症状から「山酔い」と呼ばれることもある。重症になると運動障害を伴う脳浮腫や呼吸困難となる肺水腫になり、死ぬこともある。症状が出たら高度を上げず、重症の場合はすぐに低地に下りることが基本的な対処法とされる。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
高山病とは、2500m以上の高所に登った時点から、6時間~数日以内に頭痛、めまい、食欲不振、脱力、呼吸困難などを示す
気圧の低下に伴って、酸素分圧が低下することによる低酸素症が主な原因です。高地へ登るまでの速さ、
高山病の症状は、頭痛、めまい(ふらつき)、吐き気・嘔吐、食欲不振、不眠、時に下痢、発熱を伴います。これらの症状は、低酸素血症になると生じる
重症の場合は、
高地脳症や高地肺水腫を起こす高山病は、緊急の集中治療が必要で、悪性高山病とも呼ばれます。
通常、急性高山病は、高所に到着後6~12時間で発症し、2~3日でピークになり、4~5日後には消失します。安静、保温、酸素吸入で経過を観察しますが、症状が改善しない場合は下山することが必要になります。一方、安静時においても呼吸困難があり、脈拍数が120/分以上の時は酸素吸入のうえ、すみやかに下山を考慮します。
高地脳症、高地肺水腫の症状があれば、すみやかに下山のうえ、集中治療のできる医療機関に収容します。医療機関では、組織低酸素症の改善、脱水に対する輸液管理、肺水腫に対する呼吸管理、脳浮腫治療が行われます。
寒冷、紫外線を避け、安静と保温に努めます。下山する時も歩行による運動を禁じ、可能であれば、ヘリコプターの出動を要請することもあります。
吉岡 敏治
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
登山や高地居住の初期に発生する,頭痛,倦怠感,食欲不振から悪心,嘔吐,めまいなど多彩な症状を呈する疾病。いわゆる〈山酔い〉。重症例では顔面蒼白,心悸亢進,呼吸困難をきたし,肺浮腫によって死亡することもある。発病の主原因は,高度上昇に伴う大気圧低下による低酸素血症である。低地でほぼ760mmHgである大気圧は高度3000mで約520mmHgとなり,5000mでは半分近くまで低下する。人間の呼吸気中の酸素分圧も同じ割合で低下し,身体組織への酸素供給が不足する。とくに登山など活発な身体活動では,酸素の需要が高まっているので酸素欠乏に陥りやすい。こうした低酸素状態に対して,過呼吸による換気量の増加,心拍数の増加による循環血流量の増大,酸素の運搬を行うヘモグロビン量・赤血球の増多,酸素解離曲線の移動による血液酸素飽和度の変化など,肺呼吸から組織細胞に至る各段階で低酸素の影響を緩和する方向に生体機序が変化することが高地順応(高地順化)として知られている。しかし,これらの順応機序はすべてが同時に作動するのではなく,継続的な低酸素状態にさらされるなかで漸次進展していくもので,その程度にも個人差が大きい。高地到着当初には過呼吸と心拍数増加による順応が主体であり,息苦しさや動悸が激しいのが常であるが,滞在が長期になるにつれて,他の機序が主体となり,呼吸・循環器系の症状は軽快する。高山病も高地到着後6時間から4日の間に発生することが多く,滞在日数が増すにつれて症状が軽快することから,初期順応の破綻(はたん)ともみなせよう。高山病発生の生体内機序はまだ不明な点も多いが,低酸素血症と寒冷ストレスがもたらす乏尿による脳の浮腫状態や過呼吸による血中二酸化炭素濃度の低下が呼吸中枢の感受性変化に関与することが示唆されている。こうした急性高山病とともに,アンデス高地居住者の間に肺水腫や高度の赤血球増多を呈する慢性高山病が存在している。
執筆者:竹本 泰一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
山岳病ともいい、標高2500メートル以上の高所の低圧低酸素環境に適応できずにおこる症状で、代表的な自覚症状は頭痛、食欲不振、吐き気、嘔吐(おうと)、疲労、脱力、めまい、ふらつき、睡眠障害である。そのほかに客観的に判断される所見としては、精神状態の変化(すぐに眠ってしまう、日時や場所がわからなくなる等)、運動失調(まっすぐに歩けない、立っていられない等)、顔や足のむくみがあげられる。なお高山病の重症型として注意しなければならないものに、高地肺水腫と高地脳浮腫がある。
ヒマラヤ救助協会は高山病予防の4か条として、(1)標高3000メートル以上では、眠る場所の高度を1日に300メートル以上あげないこと、(2)高度を1000メートルあげるごとに、1日休息日をとること、(3)自分が背負う荷物を重くしすぎないこと、(4)ゆっくり歩くこと、をあげている。なお高所ではアルコールの摂取や、睡眠薬、精神安定剤の使用は控えておくほうが安全である。また心臓や肺に疾患のある人はあらかじめ医師に相談しておいたほうがよい。なお高山病は疲労、寒冷、不安なども誘因として作用するので、これらの対策も予防上必要である。治療は下山にまさるものはない。やむを得ない場合は酸素吸入や携帯型加圧バッグ、内服薬などの治療が必要となる。
中高年者の登山やトレッキングが増加しており、海外のトレッキングコースには標高4000メートルを超えるものがあるので注意を要する。またチベットや南米には標高3000メートル以上の高地に乗り物で行ける観光地があり、訪れる人すべてに高山病の危険がある。
[重田定義]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…順化というと,気候順化の意味で使われることが多いが,これには高地への移動に伴う高地順化,季節変化への順化,乾燥・塩濃度の変動への順化などがある。高地順化を例にとると,高い山に登るにつれ,大気中の酸素分圧が低下し,生体に必要な酸素が十分得られず,めまい,頭痛,吐き気などの症状を呈するいわゆる高山病となる。この状態もしばらく高地にとどまっていると消失する。…
…腎炎やネフローゼにかかったことのある人も,医師の指示に従ったほうがよい。 登山特有の病気に高山病があり,3000mくらいの山でもかかることがある。やや肥満型の若い女性や高齢者の罹患率が高い。…
※「高山病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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