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高山病 こうざんびょうaltitude sickness

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

高山病
こうざんびょう
altitude sickness

低地から標高およそ 2500m以上の高地に移動したときに酸素欠乏によって起こる急性の反応。早くは 16世紀から知られており,1878年フランスの心理学者パウル・ベールが酸素不足によって引き起こされることを示した。症状は大きく次の 4種類に分けられる。(1) 息切れや,呼吸が深く速くなるなどの呼吸器系の症状,(2) 脱力感,倦怠感,めまい,頭痛,不眠,知力の減退,筋肉協調の減退,視力や聴力の低下などの身体的・精神的症状,(3) 胸の痛み,動悸,不整脈などの心臓の症状,(4) 吐き気や嘔吐などの胃腸の症状。一般に高地に到達後 6時間~4日の間に発症し,高地への順化が行なわれる 2~5日後には消失する。しかし重症の場合は低地におりなければ回復せず,死にいたることもある。高地では空気が希薄で呼吸できる酸素も減少する。気圧が低いと肺胞気の酸素分圧が低くなるため,赤血球肺胞から取り入れて体内組織に運ぶ酸素の量も減少し,酸素の欠乏が高山病のさまざまな症状を引き起こす。登山家は登山の際,高山病を軽減するためにしばしば純酸素と空気の混合気体を使用する。また高地に行く 2~3日前から利尿作用のあるアセタゾラミドを服用すると,高山病を予防または緩和できる場合がある。より重篤な高山病である高地肺水腫 HAPEは,初めて高山に登った人よりも,高地に順化した人が低地に数日間滞在したあと高地に戻ったときに発症しやすい(→肺水腫)。酸素投与を行ない低地に移動すれば短期間で回復する。

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デジタル大辞泉の解説

こうざん‐びょう〔カウザンビヤウ〕【高山病】

比較的短時間のうちに高山へ登ったときに起こる症状。気圧の低下や酸素の欠乏などが原因となる。息切れ・めまい・動悸(どうき)・頭痛・吐き気・耳鳴り難聴など。山岳病

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百科事典マイペディアの解説

高山病【こうざんびょう】

高山や高原すなわち低圧地に行くと生じる諸種の病的症状。原因は低酸素分圧による一種の窒息状態。症状は頭痛,疲労感,息切れ,食欲不振,吐き気などのほか,末梢浮腫脱水眼底出血などが現れることも。

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家庭医学館の解説

こうざんびょう【高山病】

●高山病とは
 高山病(Mountain Sickness)は、人間が海抜2500m以上の高地に到達したときにおこる症候群で、急性型と慢性型とがあります。ふつう高山病といえば、急性の高山病をさします。
 日本では登山者にみられるものが大部分ですが、近年、ペルー、ボリビア、チリなどの南米諸国、ネパール、チベット、中国西域などの高地への旅行者が増えているため、これらの人たちにもみられます。
 急性高山病は、安静と適切な治療をすれば、大部分の人が軽快・治癒(ちゆ)しますが、一部の人は重症となり、肺に水がたまる高地肺水腫(こうちはいすいしゅ)という病気になって死亡することがあります。
 高地肺水腫は、くり返し発病することがあり、体質的な素因が発病に関係していると考えられています。
●高山病の症状
 急性高山病は、高地に到達して8~48時間後に発病します。かならず頭痛がともない、消化器症状(食欲不振、吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと))、倦怠感(けんたいかん)(だるさ)や疲労感、睡眠障害、めまい・ふらつき感などの症状がみられます。
 高地肺水腫は、海抜2700m以上の高地に到達した後、1~3日以内に発病することが多く、倦怠感が強く、歩行速度が遅くなり、足どりが不安定になって隊列に遅れたり、せき、たん、息切れが顕著(けんちょ)になります。重症になると、食欲不振、喘鳴(ぜんめい)(呼吸のたびにゼーゼーいう)、血(けっ)たん、意識障害がみられ、夜にはこれらの症状が悪化します。
●検査と治療
 登山中なら、山岳診療所で血液中の酸素の濃度をはかります。入院した際は、胸部X線、脳のCT、眼底(がんてい)などを検査します。
 治療は、軽症ならば、安静、鎮痛薬の処方、および酸素吸入によって症状が軽くなります。薬物治療として、アセタゾラミドやステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬も効きます。
 高地肺水腫は、その初期の症状をとらえることが重要です。倦怠感、呼吸困難が目立ち、歩行速度の極端な低下、安静にしても脈が速い(1分間に110以上)、呼吸が速いことなどが注意すべき早期の徴候です。
 高地肺水腫と診断したら、患者さんをできるだけ早く低地へ移送する必要があります。高地に滞在を続けると、症状が悪化します。
 薬物療法としては、高度の肺水腫、意識の障害があれば、ステロイド薬を使用し、感染をともなっている場合は抗生物質も使います。
 症状の改善のため、手軽な携帯型高圧チェンバー(ガモウバッグ)も有用で、海外登山遠征などで使われています。
●高山病の予防
 2500m以上の高地に登る場合には、登山前から体調を整え、高地の環境に順応できるように、ゆっくり登山することです。
 かつて高山病にかかった人が登山する場合は、海抜2500m以下のところに宿泊します。それ以上の高地に行くときには、日帰りにし、2500m以下のところにもどるようにすると悪化が予防できます。
 海外旅行などで、標高2500m以上の高地に飛行機で行く場合は、到着後1~2日間は、その環境になれるまで、過激な運動を避け、安静にすることがたいせつです。
 急性高山病の予防薬としては、アセタゾラミド(250mg)2~3錠か、あるいはデキサメタゾン4mgを6時間ごとに服用することが有効です。両者を同時に使用すると、さらに効果があります。

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世界大百科事典 第2版の解説

こうざんびょう【高山病 mountain sickness】

登山や高地居住の初期に発生する,頭痛,倦怠感,食欲不振から悪心,嘔吐,めまいなど多彩な症状を呈する疾病。いわゆる〈山酔い〉。重症例では顔面蒼白,心悸亢進,呼吸困難をきたし,肺浮腫によって死亡することもある。発病の主原因は,高度上昇に伴う大気圧低下による低酸素血症である。低地でほぼ760mmHgである大気圧は高度3000mで約520mmHgとなり,5000mでは半分近くまで低下する。人間の呼吸気中の酸素分圧も同じ割合で低下し,身体組織への酸素供給が不足する。

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大辞林 第三版の解説

こうざんびょう【高山病】

高山に登った際、気圧の低下や酸素が少ないために起こる病的状態。頭痛・耳鳴り・動悸・息切れ・吐き気・下痢などが起こる。山岳病。山酔い。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

高山病
こうざんびょう

山岳病ともいい、標高2500メートル以上の高所の低圧低酸素環境に適応できずにおこる症状で、代表的な自覚症状は頭痛、食欲不振、吐き気、嘔吐(おうと)、疲労、脱力、めまい、ふらつき、睡眠障害である。そのほかに客観的に判断される所見としては、精神状態の変化(すぐに眠ってしまう、日時や場所がわからなくなる等)、運動失調(まっすぐに歩けない、立っていられない等)、顔や足のむくみがあげられる。なお高山病の重症型として注意しなければならないものに、高地肺水腫と高地脳浮腫がある。
 ヒマラヤ救助協会は高山病予防の4か条として、(1)標高3000メートル以上では、眠る場所の高度を1日に300メートル以上あげないこと、(2)高度を1000メートルあげるごとに、1日休息日をとること、(3)自分が背負う荷物を重くしすぎないこと、(4)ゆっくり歩くこと、をあげている。なお高所ではアルコールの摂取や、睡眠薬、精神安定剤の使用は控えておくほうが安全である。また心臓や肺に疾患のある人はあらかじめ医師に相談しておいたほうがよい。なお高山病は疲労、寒冷、不安なども誘因として作用するので、これらの対策も予防上必要である。治療は下山にまさるものはない。やむを得ない場合は酸素吸入や携帯型加圧バッグ、内服薬などの治療が必要となる。
 中高年者の登山やトレッキングが増加しており、海外のトレッキングコースには標高4000メートルを超えるものがあるので注意を要する。またチベットや南米には標高3000メートル以上の高地に乗り物で行ける観光地があり、訪れる人すべてに高山病の危険がある。[重田定義]

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世界大百科事典内の高山病の言及

【順化】より

…順化というと,気候順化の意味で使われることが多いが,これには高地への移動に伴う高地順化,季節変化への順化,乾燥・塩濃度の変動への順化などがある。高地順化を例にとると,高い山に登るにつれ,大気中の酸素分圧が低下し,生体に必要な酸素が十分得られず,めまい,頭痛,吐き気などの症状を呈するいわゆる高山病となる。この状態もしばらく高地にとどまっていると消失する。…

【登山】より

…腎炎やネフローゼにかかったことのある人も,医師の指示に従ったほうがよい。 登山特有の病気に高山病があり,3000mくらいの山でもかかることがある。やや肥満型の若い女性や高齢者の罹患率が高い。…

※「高山病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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