気脳撮影(読み)きのうさつえい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「気脳撮影」の意味・わかりやすい解説

気脳撮影
きのうさつえい

気脳(造影)法ともいい、頭蓋(とうがい)内疾患の検査法(脳室造影法)の一つ。20世紀初頭、アメリカのダンディW. E. Dandy(1886―1946)により創始された。頭蓋内には、くも膜下腔(くう)、大槽、脳室といった脳脊髄(せきずい)液に満たされた間隙(かんげき)があり、脳脊髄液腔と総称されるが、これは通常のX線撮影では描出されない。そこで、脳脊髄液腔を気体(空気、酸素、二酸化炭素、笑気)で置換してX線撮影を行うと、その形態が観察できる。これが気脳撮影で、描出された脳脊髄液腔の形態学的変化によって脳腫瘍(しゅよう)、水頭症、脳萎縮(いしゅく)などの診断が行われる。気体(X線吸収の少ない陰性造影剤)の注入は主として腰椎穿刺(ようついせんし)により行われるが、直接脳室穿刺によって行われる場合もあり、これは空気脳室撮影または気室撮影と区別してよばれる。X線テレビモニター下に大槽穿刺による方法もある。また、最近では気体のほかにヨード剤(X線吸収の多い陽性造影剤)も用いられる。禁忌としては、頭蓋内圧亢進(こうしん)、頭蓋内感染症時である。

 いずれにしてもこの検査法はCTコンピュータ断層撮影法)、MRI磁気共鳴映像法)の導入により、その多くがとってかわられ、今日その適応範囲はかなり限定されてきている。

[加川瑞夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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