化学辞典 第2版 「氷型構造」の解説
氷型構造
コオリガタコウゾウ
ice structure
氷の構造には圧力と温度によって変化する多くの相があり,各相はローマ数字で区別されている.大気圧下,水から凍ると Ⅰh 相となる.hは六方晶系を意味する.通常の条件下で存在するのは,この相であるので,Ⅰh 相を氷型構造という.空間群はP 63/mmcに属する.酸素の結晶学的位置は,繊維亜鉛鉱(ウルツ鉱)の亜鉛と硫黄の位置に相当する.各酸素原子には,4個の酸素原子が水素を介して四面体型に配置する.四面体の連結により,6個の酸素が環状に連なった酸素六員環が形成され,かご状の空間をつくる.かご構造のため,氷の密度は小さく水に浮く.また,酸素六員環の存在により,氷および雪の結晶は六角板状の外形となる.ヨウ化銀の結晶構造は Ⅰh 相の酸素の位置と同じ構造であるので,ヨウ化銀は人工降雨の氷晶核として用いられる.Ⅰh 相の水素は近接の酸素と水素結合をしているが,水分子の配向変化運動に伴い,その位置は無秩序である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報