雲に種まきをする方法などによって人工的に雨(または雪)を降らすこと。干魃(かんばつ)のときなどに雨を降らせようとして火を燃やしたり、雲の中に大砲を打ち込む試みは古くから行われてきたが、これらの方法は、雲の中で雨のできる仕組みがわかっていない時代のものであった。1933年にスウェーデンのベルシェロンT. Bergeronが、雲の中で雨や雪のできる仕組みについて有名な氷晶説を発表し、1938年にはドイツのフィンダイゼンW. Findeisenが、氷晶説に基づいて人工的に氷晶核を雲の中にまくと雨や雪を降らせることができることを予言した。またさらに1946年になってアメリカのシェーファーV. J. Schaeferは、過冷却した霧でいっぱいになっている冷蔵庫の中にドライアイスの破片を落としたところ、たくさんの氷晶が発生することをみいだした。この実験はフィンダイゼンの考えを初めてテストして実現したこととなった。同年にアメリカのボンネガットB. Vonnegutは、ヨウ化銀を燃やしたときにできる微細な結晶が零下50℃以下で氷晶核として有効に作用することを発見した。これらの研究に基づいてアメリカのゼネラル・エレクトリック研究所の科学者らは、飛行機の上からドライアイスの細片を雲の上に落としたり、ヨウ化銀をしみ込ませた石炭を燃やしながら雲の上に落とす実験を行い、過冷却した自然の雲を氷晶の雲に変えることに成功した。これが現代の人工降雨に関する自然を相手とした最初の試みであった。それ以来ドライアイスやヨウ化銀を用いた人工降雨に関する実験は、日本を含め世界各国で数多く行われてきた。
いままでに世界各国で行われてきた人工降雨のおもな技術的方法と、その成果をまとめてみると次のとおりである。
(1)ドライアイス法 ドライアイス数キログラムを直径約1センチメートルの小片に砕いて飛行機から雲の上にまく。このとき雲頂の温度が零下7℃以下で、過冷却した雲の層の厚さが約1500メートル以上の場合には、高い確率で雨が降る。
(2)ヨウ化銀法 アセトンに溶かし、これを燃やしてヨウ化銀の煙を出す。飛行機または地上で発煙する。またヨウ化銀を火薬と混ぜて雲の中に打ち込み爆発させる方法もある。これは旧ソ連で採用されたもので、ヨウ化銀1グラムから1014個程度の莫大(ばくだい)な数の微粒子ができるので、1回の実験でヨウ化銀10グラム程度用いるだけでよいとされている。
これらの方法による人工降雨はダムの増水(水力発電用、各種用水など)などに利用されてきた。およそ10~20%増雨(雪)があると信じられている。
[大田正次]
過冷却雲が存在するときに,ヨウ化銀など人工の氷晶核(氷晶)を散布し,あるいはドライアイスを散布して雲粒を凍結させて氷晶核を発生させ,雨または雪を降らせること。雲粒の中に氷晶ができると,氷と水の飽和蒸気圧の差によって,氷晶は水蒸気をもらい,どんどん成長して雪の結晶となり雲内を落下する。途中で結晶どうしが付着しあって雪片となったり,また雲粒つき結晶となってさらに落下し,下部にこれを融解させる層があれば雨となって地上に到達する。科学的な人工降雨の最初の実験は1946年アメリカのゼネラル・エレクトリック社のI.ラングミュアとシェーファーV.J.Schaeferによって行われ,過冷却の高積雲に航空機からドライアイスを散布し雪を降らせた。その後各国で実用化にむけ実験が続けられた。しかし,この方法は原理的には正しいものの,増雨効果があまり明確ではない。たとえばアメリカで78-80年に行われた実験では,増雨効果は5%と報告されている。このためアメリカで商業的に行われている例はあるものの,70年代以降基礎研究を除き低調である。
執筆者:内田 英治+菊地 勝弘
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(饒村曜 和歌山気象台長 / 2008年)
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