日本大百科全書(ニッポニカ) 「永遠主義教育」の意味・わかりやすい解説
永遠主義教育
えいえんしゅぎきょういく
perennialist education
古代、中世の哲学や神学、とりわけスコラ哲学を永遠に妥当するものと確信し、これらの古典をカリキュラムの中核に据え、時間空間を超えて不変の「永遠の真理」を万人に学ばせるべきであると主張する立場。1930年代初頭、アメリカで進歩主義教育を批判する伝統主義的立場の一つとして復興され、現代アメリカにおける教育思想の主要類型の一つにも数えられる。この立場の代表者ハッチンズRobert Maynard Hatchins(1899―1977)は、「知性の涵養(かんよう)」をもって教育の目的とし、この目的はただ「自由教育」、すなわち、プラトン、アリストテレス、トマス・アクィナスなどの著作を中心とする「偉大なる書物」Great Booksの講読と自由学芸、とくに文法、修辞学、論理学、数学における訓練によってのみ達成されると強調した。ハッチンズのほか、この立場ではアドラーやマリタンらが有名である。
[山崎高哉]
『R・M・ハッチンズ著、田中久子訳『偉大な会話』(1956・岩波書店)』