日本大百科全書(ニッポニカ) 「江戸参府旅行」の意味・わかりやすい解説
江戸参府旅行
えどさんぷりょこう
江戸時代、日本貿易を許可されたオランダ商館長(甲比丹(カピタン))が将軍への拝謁、献上するために行った江戸旅行。毎年1月長崎発、3月朔日(さくじつ)将軍拝謁を例とし、江戸には2~3週間滞在し、宿舎は日本橋本石町(ほんごくちょう)長崎屋源右衛門方であった。1633年(寛永10)から毎年1回に制度化され、旅程は大名の参勤交代に準じて扱われた。1790年(寛政2)からは5年に1回となり、1850年(嘉永3)まで166回に及んだ。この旅行は日本人にとり、西洋文化に接する数少ない機会であり、蘭学者(らんがくしゃ)に大きな影響を与えた。たとえば大槻玄沢(おおつきげんたく)は前後6回も参府の商館長を訪問している。また随員のなかにも、ケンペル、シーボルトなど日本の見聞録を著す者も出た。
[沼田 哲]
『シーボルト著、斎藤信訳『江戸参府紀行』(平凡社・東洋文庫)』