汪兆銘(おうちょうめい)(読み)おうちょうめい

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

汪兆銘(おうちょうめい)
おうちょうめい / ワンチャオミン
(1883―1944)

中国の政治家。字(あざな)は精衛(せいえい)。広東(カントン)省出身。日本の法政大学に留学中、中国同盟会に入り、機関紙『民報』の記者を務めた。1910年、清(しん)朝の摂政王暗殺未遂により、死刑の宣告を受けたが、辛亥(しんがい)革命で大赦。のち広東国民政府にあって孫文(そんぶん/スンウェン)を助け、連ソ容共を内容とする1924年の国民党改組に参加した。孫文の死後は、廖仲愷(りょうちゅうがい/リヤオチョンカイ)、胡漢民(こかんみん/フーハンミン)らとともに国民党左派の中心となって蒋介石(しょうかいせき/チヤンチエシー)と対立、1927年の国共合作政権である武漢政府にも参加した。国共内戦と世界恐慌のなかで自己の方向を失い、蒋介石との派閥抗争に走った。1938年4月、国民党副総裁になったが、日中戦争激化のなかで、日本軍の画策にのって、重慶(じゅうけい/チョンチン)から脱出。ハノイで和平建議を発表して日本の近衛文麿(このえふみまろ)首相に接近し、1940年3月、日本の傀儡(かいらい)である南京(ナンキン)政府を樹立主席に就任した。1944年(昭和19)名古屋で病没した。

[加藤祐三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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