改訂新版 世界大百科事典 「沈着症」の意味・わかりやすい解説
沈着症 (ちんちゃくしょう)
deposition
外来性の物質あるいは自己の産生する物質が生体組織に沈着し変色すること。外来物質によっておこるものには炭粉沈着症(肺,リンパ節が黒色化),銀沈着症(硝酸銀の服用で皮膚,粘膜,内臓が灰色化),鉛(なまりえん)(鉛を含む化粧品の使用で歯肉に硫化鉛が沈着),また入墨がある。自己の物質では,黒色色素のメラニン(そばかす,ほくろ,悪性黒色腫),褐色色素リポフスチンの沈着(萎縮性臓器),血色素(生理的に,あるいは多量の輸血後,血色素が崩壊して,鉄を含む色素が沈着する),胆汁色素(黄疸)がある。石灰沈着は,細胞や組織の変性,壊死にともなっておこるものが多い(老人の軟骨,動脈硬化をおこした血管,古い結核病巣)。血液中の石灰量が異常に増えても,石灰沈着がおきる。痛風は,関節,腱に尿酸結晶が沈着する疾患であるし,シュウ酸症では腎臓にシュウ酸が沈着する。特殊な病気として,血清タンパク質異常で,角膜,大脳基底核の神経細胞,肝細胞に銅が沈着しておこるウィルソン病や,ホモゲンチシン酸が軟骨に沈着して黒変するオクロノーシスがある。
執筆者:山口 和克
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報