改訂新版 世界大百科事典 「硫化鉛」の意味・わかりやすい解説
硫化鉛 (りゅうかなまり)
lead sulfide
化学式PbS。天然には方鉛鉱として,また他の硫化鉱物とともに産出する。2価の鉛の化合物のみが知られている。鉛(Ⅱ)化合物の水溶液に硫化水素を通じるか,酢酸鉛(Ⅱ)水溶液を加熱しながらチオ尿素を加えると,黒色の沈殿として得られる。等軸晶系で塩化ナトリウム型構造をもち,融点1114℃。密度は7.59g/cm3。水にはほとんど不溶で,水100gに対する溶解度は18℃で8.6×10⁻5g程度。希塩酸,希硫酸にはほとんど溶けないが,硝酸には溶ける。アルカリとはほとんど反応しない。空気中で加熱すると分解し,酸化鉛(Ⅱ)あるいは硫酸鉛となる。半導体としての性質をもっており,光起電力効果が著しい。光電池,赤外線検出器などに用いられる。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報