泉崎横穴(読み)いずみざきよこあな

日本大百科全書(ニッポニカ) 「泉崎横穴」の意味・わかりやすい解説

泉崎横穴
いずみざきよこあな

福島県西白河(にししらかわ)郡泉崎村大字泉崎字白石山に所在する古墳時代後期の装飾横穴阿武隈(あぶくま)川上流に注ぐ泉川の北岸に位置し、第三紀凝灰岩からなる丘陵南面に形成された3基の横穴の一つ。1933年(昭和8)12月、県道改良工事中に発見され、玄室(げんしつ)に壁画のあることがわかった。九州よりはるか離れた東北地方においても、墓室を被飾する風習のあったことを確認した初の遺跡として、学史に名高い。横穴は約2メートル角、高さ1メートルほどで、方形造(ほうぎょうづくり)の天井と、奥壁(おくへき)に沿う一段高い造り出し棺床(かんしょう)は、この横穴を特色づけている。奥壁と左右壁、天井には赤色塗料により、騎馬人物、男女群像、馬、渦文、円文、珠文、それに三角文を描出している。7世紀前葉に属する。34年国の史跡に指定。壁画の写真が泉崎資料館に展示されている。

[馬目順一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

国指定史跡ガイド 「泉崎横穴」の解説

いずみざきよこあな【泉崎横穴】


福島県西白河郡泉崎村泉崎にある横穴装飾古墳。造営の時期は6世紀末~7世紀初頭とされ、県道沿いの丘陵の傾斜面にあり、凝灰岩をうがって横穴ができている。2.1m四方、高さ1.15mの家形の玄室があり、奥壁、側壁、天井に丹朱騎馬像、人物、渦巻文や図形が描かれている。このような顔料で装飾された横穴は日本でも稀な例である。直刀、刀子、銅環なども少量だが出土している。1933年(昭和8)、県道拡張工事に際して発見され、装飾横穴としては東北地方で初めてだった。翌年、国の史跡として指定され、1984年(昭和59)、追加指定された。JR東北本線泉崎駅から徒歩約30分。通常は非公開で、泉崎駅の前にある泉崎資料館で壁画の実物大写真パネルを展示している。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の泉崎横穴の言及

【装飾古墳】より

… 横穴を墓室とするものの場合には,九州地方では熊本県石貫(いしぬき)横穴のように,入口のまわりに同心円や三角形を赤色で描いたものや,熊本県大村横穴のように,外壁に器物や人馬を浮彫にしたものがあって,いずれも多くの類例が群集している。他の地方にも,大阪府高井田(たかいだ)横穴の通路の両側壁に人物と舟とを線刻したものや,福島県泉崎(いずみさき)横穴の室内に人馬の群像を赤色で描いたものなど,少数の遺例が各地に散在している。 九州地方の装飾古墳のうち,横穴式石室に彩画を描いたもののなかには,明らかに大陸文化の影響をうけたと考えてよいものがある。…

※「泉崎横穴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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