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法の欠缺 ほうのけんけつ

世界大百科事典 第2版の解説

ほうのけんけつ【法の欠缺】

裁判にあたって適用すべき法規がない場合のように,ある事柄について適用さるべき法が欠けていること。19世紀の法学においては,法には欠缺がなくすべての法律問題は制定法とその解釈によって解決がえられるという考え方が強かった。これを法秩序の完足性の思想と呼ぶ。この考え方は,19世紀末以来利益法学や自由法論によって批判され,スイス民法1条(1907)は,〈適用しうる法条がない場合には慣習法により,慣習法もない場合には,もし裁判官が立法者であったならば定立するであろう原則に従って裁判すべし〉と規定し,法の欠缺を認めている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

法の欠缺
ほうのけんけつ

あるべき法が欠けていること。立法者は全能ではないし、時代は変化するから、法には必然的に欠缺が生ずる。スイス民法典第1条は、その場合には「裁判官自身が立法者であるとすれば設定するであろうところの原則」に従って裁判すべしと定めた。ただし、法が「あるべき」かどうかは、主観的判断に流れる危険もあり、立法者が不適当だと思った規範を適用者がかってにつくりだす危険もある。[長尾龍一]

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世界大百科事典内の法の欠缺の言及

【法実証主義】より

…この対立の外にある特徴として,(5)法学の対象論における法規lex(ラテン)概念の権利ius(ラテン)概念に対する優越を認める見解がある。 このほか,この潮流のいくつかの理論がもつ特徴としては,(a)法体系は論理的に閉ざされた体系であるので,個別的な司法的判断は,道徳的基準,社会的目的や政策などの価値的・イデオロギー的考慮から自由に,あらかじめ決定された法規範から論理的に演繹されるという概念法学的主張,(b)時代が下って,同じ司法的決定の問題に関し,〈法の欠缺〉を認め,欠缺のある場合には司法的創造を認める二段階説,(c)価値判断一般の判断・認識としての性質を認めない〈価値についての非認識説〉の立場から,価値判断の一種としての法的判断についても判断・認識としての性質その正しさ,客観性は問題にならないとする主張,(d)法の妥当はその法への服従義務の存在を意味するとする主張,などがあげられる。
[問題点]
 法実証主義の潮流に対しては,それが種々の望ましくない実践的帰結をもたらすという非難が加えられてきた。…

※「法の欠缺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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