条理
じょうり
naturalis ratio; Natur der Sache
事物の道理・筋道のことで,理法,事物の本性などと表現されることもあり,裁判において,成文法や慣習法の欠陥を補充するために採用されることが多い。社会通念,公序良俗および信義誠実の原則なども条理を表現しているといえる。日本では,1875年の裁判事務心得で,「民事ノ裁判ニ成文ノ法律ナキモノハ慣習ニ依リ,慣習ナキモノハ,條理ヲ推考シテ裁判スヘシ」 (3条) と定めている。諸外国の立法では「自然的法原理」 (オーストリア) ,「法の一般原則に従って」 (イタリア) などの表現を用いている。条理に法源としての地位を認めるべきか否かについては,その内容が不確定的,流動的であるだけに,異論が多い。
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じょう‐り〔デウ‐〕【条理】
物事の筋道。道理。「条理を立てて説明する」「条理にかなう裁決」
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条理【じょうり】
法律上,成文法・慣習法・判例法などが欠けているとき裁判の基準となる〈ものの道理〉,事物の本性をいう。広くは社会通念,公序良俗,〈信義誠実の原則〉を含む。実定法規に欠缺(けんけつ)や疑義のある場合,条理により解釈することを条理解釈という。法源として認められるのかどうかについては争いがある。
→関連項目不文法
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じょうり【条理】
一般には,物事のすじみち・道理という意味であり,法律上でも,ほぼこのように用いられるが,法特有の意味がある。 1875年太政官布告〈裁判事務心得〉3条は,〈民事ノ裁判ニ成文ノ法律ナキモノハ習慣ニ依リ習慣ナキモノハ条理ヲ推考シテ裁判スヘシ〉と規定し,条理をもって民事裁判の基準とすべき旨を定めた。この布告が現在でも法律としての効力をもっているかどうかは問題であるが,学説は,一般に,この規定の精神を根拠として,条理を,制定法,慣習に次ぐ私法の法源の一つと考えている。
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条理
じょうり
naturalis ratio(ラテン)、Natur der Sache(ドイツ)の訳語。物の道理、物事の筋道、自然の理法を意味し、社会秩序はこのような条理を基礎に成り立っており、法もまた条理をもととしているという思想がある。明治8年(1875)太政官(だじょうかん)布告第103号裁判事務心得第3条に「民事裁判ニ於(おい)テハ成文アルモノハ成文ニ依(よ)リ成文ナキトキハ慣習ニ依リ成文慣習共ニ存セサルトキハ条理ヲ推考シテ裁判スヘシ」という規定があり、これが現在有効か否かは論議があるが、この原則は妥当なものと認められている。すなわち、法則が欠けている場合(法の欠缺(けんけつ))や、はっきりしない場合に、「補充法源」として、条理は法解釈の指針となる。
[長尾龍一]
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じょう‐り デウ‥【条理】
〘名〙
① 物事のすじみち。もののことわり。物事の道理。
※清原国賢書写本荘子抄(1530)二「徳を執に条理あり」
※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉四「一旦縁を切た上は、度々ひきよせるは条理(デウリ)であるまい」 〔孟子‐万章・下〕
② 裁判などにおいて標準となる社会生活の道理。物事のすじみち。社会通念、公序良俗、信義誠実の原則などで言い表わされることもある。
③ (━する) すじみちを立てて整理すること。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「閉院の後両月は、開院中に議決せる事を、区処条理して」
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