洞頻脈

内科学 第10版 「洞頻脈」の解説

洞頻脈(上室頻脈性不整脈)

a.洞頻脈(sinus tachycardia)
定義・概念
 洞結節起源で,100拍/分以上の調律をいう.多くは100〜150拍/分である.
原因・成因
 健常人でも交感神経の亢進または迷走神経の活動低下でもたらされる.原因として不安,運動,発熱などがある.病的な例として,心不全,ショック,出血貧血,甲状腺機能亢進症がある.β刺激薬も洞頻脈をきたす.洞頻脈と生命予後の関連が疫学的にも注目され,心拍数が75拍/分以上ではそれ以下に比べ予後が悪いことがいくつかの疾患で知られている.まれに常時または起立時に頻脈をきたすものがあり,不適切洞頻脈(inappropriate sinus tachycardia)および起立性頻脈症候群(postural orthostatic tachycardia syndrome)とよばれる.
疫学
 原疾患の頻度で規定される.
病態生理
 血行動態は安定しているが,心筋梗塞や狭心症では頻脈が心筋虚血を増悪させることがある.
臨床症状
 無症状で過ごす.ときに自分で頻脈に気づいて受診することがある.頻脈による動悸や不安の強い例がある.
診断
 心電図による.12誘導で洞調律時と同一波形のP波が認められる.PP間隔は正常洞調律時では15%以内の変動を示すが,頻脈時は変動は小さい.房室伝導は1:1で行われ,PR間隔も正常例が多い.鑑別には洞結節性リエントリー頻拍がある.これは洞性P波を示し,頻拍は発作性に出没する.
経過・予後
 予後は良好で,血行動態的にも問題にならない.
治療
 原因や誘因を除去する.これらが不明な場合,症状軽減を目的に,精神安定剤やβ遮断薬などを投与する.[相澤義房]
■文献
Cappato R, Calkins H, et al: Updated worldwide survey on the methods, efficacy, and safety of catheter ablation for human atrial fibrillation. Circ Arrhythm Electrophysiol, 3: 32-38, 2010.
Connolly SJ, Ezekowitz MD, et al: Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med, 361: 1139-1151, 2009.
児玉逸雄,他:不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版),日本循環器学会,http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf
奥村 謙,他:不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版),日本循環器学会,http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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