調律(読み)チョウリツ(その他表記)tuning

翻訳|tuning

デジタル大辞泉 「調律」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐りつ〔テウ‐〕【調律】

[名](スル)楽器の音高を、ある音律に合うようにととのえること。音色や楽器の機構の調整を含めていうこともある。調音。「ピアノ調律する」

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精選版 日本国語大辞典 「調律」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐りつテウ‥【調律】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 調子。音律。
    1. [初出の実例]「かの内部生活の幽かなる振動のリズムを感じその儘の調律に奏でいでんとする音楽的象徴を」(出典:邪宗門(1909)〈北原白秋〉例言)
  3. ( ━する ) 調子や音調を整えること。特に楽器でピアノ、オルガン打楽器などを正しい音高や音色を保つように、一定の基準音をもとに音律を整えること。また、そのために楽器の部分を修理・修正すること。弦楽器の場合は調弦という。
    1. [初出の実例]「音楽家が最初に弾いたといふのは、それはただの調律(テウリツ)で、何の楽曲でもなかったのである」(出典:茶話(1915‐30)〈薄田泣菫〉老画家と音曲)

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改訂新版 世界大百科事典 「調律」の意味・わかりやすい解説

調律 (ちょうりつ)
tuning

楽器の音の高さを目的の音律に前もって整えること。広くは音質や演奏機構の調整も含めていう。鍵盤楽器,音程をもつ打楽器,管楽器の管長や指孔の形状・位置,フレット楽器のフレット位置などが対象となる。鍵盤のない弦楽器の開放弦については調律といわずに調弦という。音高決定には2通りの方法がある。(1)1音1音独立して整える方法。おもに音の基音自体を調律の対象としており,測定器を用いて行うことが多い。管長や弦長の分割,発振器の周波数の決定,個々の振動体の固有振動数調整など,楽器の製造工程で音律が固定づけられるものに多く見られる。(2)特定の1音を基準として他はそれに対して相対的有機的に整える方法。ピアノやパイプ・オルガンのような和声的楽器に多く見られ,2音間に生じるうなりの状態や響き方の聴感的判断によって調律される。補助的に測定器を用いることもある。まずその楽器の音律の基準となる音を音叉または調子笛などによって定めると,同音,オクターブ,完全5度,完全4度,長短3度,長短6度などの協和音程を用いてその響きを判断して順次音階音を整えてゆくのであるが,精度の高い音律を構成することができる。しかし,日本の箏では調弦に不協和な短2度音程も用いるので,このような場合には主観による相違が大きく認められる。ピアノなどの弦楽器では,よく調律された音階・音高は理論値に対し,高音部では漸次高めに,低音部では漸次低めになっている傾向がある。この原因は心理的な影響や発音体のもつ倍音の非整数倍振動などによると説明されている。

 調律には音質を整える作業が伴っており,これは整音と呼ばれる。クラビコードハープシコードなどの中世の鍵盤楽器においては,演奏者自身が調律することが多かったが,18世紀に入りピアノが登場し12等分平均律が採用される頃になるとしだいに技術者の手に任せられるようになり,現在では調律専門の技術者によって行われるのが普通となっている。楽器の音高を弦長の比率によって整える方法を発表した最初の人はピタゴラスである。東洋では前漢の京房が管長の比率で音律を整えることを行った。これらは,完全5度(2:3)上り,完全4度(3:4)下り,また完全5度上りということを繰り返して調律する手法となり,ピタゴラス式三分損益(法),4度5度方式などと呼ばれる。現在の鍵盤楽器類に広く採用されている音律は12等分平均律で,12の等しい半音程ですべての音程を構成させるものである。約2セント(平均律の半音がちょうど100セント)狭くした完全5度を繰返し重ねていくとオクターブを12等分割することができる。この分割作業はうなりの聞きやすいテノールの音域のあたりで行われ,〈割振り〉と呼ばれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「調律」の意味・わかりやすい解説

調律
ちょうりつ
tuning 英語
Stimmung ドイツ語
accordage フランス語
accordatura イタリア語

楽器の音高を演奏の目的にあった状態に整えること。音質や音色が問題で明確な音高を必要としない楽器(ゴングドラムシンバルなど)の場合は「整音」とよぶが、広義の調律にはこの「整音」や、楽器の演奏機構を整備する「調整」などの作業も含まれる。

 音高を決定するには、弦長、管長の分割などによって一音一音独立して整える方法と、二つ以上の音の間に生じるうなりや響きぐあいによって整える方法とがある。両者を用いつつ音高は特定の音律(西洋音楽では12平均律が標準)と標準音高(同様にA4=440ヘルツが標準)によって決定されるが、古代ギリシアのピタゴラス音律から15~19世紀の中全音律を経て、今日の12平均律に至る西洋音楽の調律の歴史を顧みるまでもなく、実際には理論値に対してある程度の偏差をもっており、音楽的な耳で聴感的に調整されることが望まれる。

 調律には、製作時になされる半永久的なもの(鉄琴、木琴、ベル、木管楽器など)と、気温や湿度、使用に伴う変化のためしばしばなされるもの(ピアノ、オルガンなどの鍵盤(けんばん)楽器)とがあり、これらは調律師などの専門家の手によってなされることが多い。このほか、奏者によって演奏準備のためそのつどなされる調整として、弦楽器の開放弦を調律する「調弦」(ギター、箏(そう)など)や、オーケストラなどの合奏で全体の音高をそろえる「音合せ」などがある。

[川口明子]

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百科事典マイペディア 「調律」の意味・わかりやすい解説

調律【ちょうりつ】

楽器を一定の音律に調整し,また音色などを整えること。チューニングtuning。バイオリンなどは弦を規定の音高(音の高さ)に合わせ(調弦),フルートなどは管長を調節する。ピアノでは12平均律によってすべての音を調律するため,特別な技術者(調律師)が必要。オーケストラ(管弦楽)や複数の楽器間の演奏前の音合せについては,一般にチューニングの語が用いられる。→標準音
→関連項目リチェルカーレ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「調律」の意味・わかりやすい解説

調律
ちょうりつ
tuning

楽器の音律を整えること。ピアノ,オルガンのように各音が固定された楽器においては,すべての音が整えられるが,弦・管楽器などは,特定の音のみ整えられる。調律の仕方は大きく分けて,1音ずつ決定する方法と,2つ以上の音の間に生じるビートを用い相関的に整える方法とがある。

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世界大百科事典(旧版)内の調律の言及

【同調】より

…共振器を用い,入力信号の中から目的とする周波数の信号のみを抽出すること。例えば,図のように,増幅器の負荷としてLC共振回路を用いると,負荷の共振周波数付近のみ利得が大きくなり,その他の周波数では利得が小さくなって同調がとれる。このような増幅器を同調増幅器という。同調回路は,出力側だけでなく,入力側につけることも多い。同調回路を用いると,増幅素子の入出力容量を共振容量に組み入れることができるため,比較的高い周波数の増幅も可能となる。…

【音律】より

音階を構成する諸音の音高関係を数理的に規定したものを音律と呼び,一定の音律に従って楽器の音を整えることを調律という。中国および日本では,音律に近い概念を表す言葉として楽律が用いられてきた。…

※「調律」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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