流体伝動装置(読み)りゅうたいでんどうそうち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「流体伝動装置」の意味・わかりやすい解説

流体伝動装置
りゅうたいでんどうそうち

機械的エネルギーを流体の力学的エネルギーに変換し、これをもう一度機械的エネルギーに変換することにより動力を伝達する装置。最初の変換はポンプにより行われ、2回目の変換はタービンあるいは液圧モーターによって行われる。動力伝達の過程での2回のエネルギー変換のたびに損失が生じるので伝達される動力は減少するが、動力が確実に伝達される、入出力軸間の回転速度比が無段階に選べる、入力軸側に振動や衝撃が加わっても出力軸に伝わらない、逆に負荷の急激な変動が原動機に影響を与えない、制御が容易である、などの利点があり、広く用いられている。

 作動流体としては潤滑能力の高い油が使われている。主要構成要素となっている流体機械として、ターボ型ポンプとタービンとの組合せを用いる場合と、容積型のポンプとモーターまたはシリンダーとの組合せを用いる場合とがあり、前者には流体継手(つぎて)やトルクコンバーター後者には油圧伝動装置がある。流体に中間的に伝えられる動力は、ポンプで発生させられる圧力Pと流量Qとの積で表される。一定の動力を伝える場合、Pを大にしてQを小さくする方法と、Pを小にしてQを大にする方法とがあり、油圧伝動装置は前者に対応し、流体継手やトルクコンバーターは後者に対応している。

 油圧伝動装置では、油圧ポンプ油圧モーターまたは油圧シリンダーとを別々に離して設置し、管あるいはホースで接続することが可能であるので、動力伝達システムの配置の自由度が大きい。また、一つの原動機からいくつかの系統に動力を伝えることが容易であり、パワーショベルフォークリフトトラックダンプトラックなど建設機械や産業車両の駆動に広く用いられている。

池尾 茂]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android