流体機械(読み)りゅうたいきかい(英語表記)fluid machinery

改訂新版 世界大百科事典 「流体機械」の意味・わかりやすい解説

流体機械 (りゅうたいきかい)
fluid machinery

水,油などの液体や,空気,ガスなどの気体(液体と気体を総称して流体という)を対象に,電動機やタービンなどの動力を使って流体を昇圧・圧送したり,あるいは流体の圧力速度を利用してこれから動力を取り出す機械の総称。取り扱う流体が液体か気体か,流体に動力を与えるか取り出すかによって次の四つのグループに大別される。(1)液体を昇圧する機械は,その昇圧の大きさにかかわらず,すべてポンプと呼ばれる。(2)これに対して気体を昇圧する機械では,その昇圧の程度によって送風機圧縮機に区別される。(3)液体から動力を取り出す機械は一般に水車と呼ばれるが,油圧装置などに使われ高圧の油から動力を取り出す容積形のものは油圧モーターという。(4)蒸気高圧ガスから動力を取り出す機械は蒸気タービンガスタービンなどと呼ばれる。空気の流れである風から動力を取り出すものは風車,高圧の空気を膨張させて動力を取り出す容積形のものを空気モーターという。また,空気(広くは気体一般を含める)を対象とするものを空気機械,水(広くは液体一般を含める)を対象とするものを水力機械と呼ぶことも多い。なお,真空を作り出すために使われる真空ポンプは,その作用としては圧縮機と同等である。

 流体機械の作動原理は,図の機能モデルを使って説明できる。いま,動力を使って流体を昇圧・圧送する場合を考えると,連続的に送り込まれてくる圧力p1の流体は,コンベヤ上に並んだ容器に次々に受け入れられ,次の加圧工程に回される。加圧プレスで圧力p2に昇圧された流体は,最後に押出機にかけられ外部へ送り出される。液体のように体積変化が起こりにくい流体(非圧縮性流体)では,加圧工程でほとんど仕事を必要とせず,大部分の動力が液体の柱を押し出すための押出工程で消費される。一方,気体のように体積変化の起こりやすい流体(圧縮性流体)では,プレスを押し込む仕事が大半を占め,空気の場合では,加圧工程と押出工程に,約7:3の割合で動力が配分される。流体から動力を取り出すときは,ちょうどコンベヤラインが逆転する場合に相当し,押出機に逆流するときに流入仕事を,加圧プレスで減圧されるときに膨張仕事を発生する。

 上述の機能モデルを実現する流体機械の構造は,容積形とターボ形に大別される。容積形は,図の機能モデルにもっとも近い方式である。流体の吸込み,吐出しを繰り返す容器を押のけ室と呼び,その実現方法によって容積形はさらに往復式と回転式に分けられる。往復式は,シリンダー中を往復するピストンによって容積の増減を行うもので,ピストンの引抜き行程が図の受入れ工程,押込み行程の前半が加圧工程,後半が押出工程に対応する。必要なとき以外は吸込口や吐出口を閉鎖して逆流を防止するため,弁またはそれと類似な機構が必要である。回転式はローターの回転につれて押のけ室が吸込側から吐出側に移動し,その間に容積の増減が起こる構造のものである。ローターの1回転の前半が吸込行程に,残りの半分が押出行程に相当し,その作用は往復式と同じである。押のけ室をくぎる隔壁が逆流を防止するので,弁を必要としない利点がある。流体の漏れを防ぐためには構造の単純な往復式が有利であり,このため,超高圧用には往復式が多い。回転式は脈動が小さく高速回転に適する利点を生かして広く使われるが,その構造には多種,多様な変形がある。

 ターボ形では,加圧と押出しに要する力を,翼に働く揚力を使って実現し,この二つの工程が羽根車の中で混然として行われる。羽根車は複数の羽根をもつ回転体で,流体がここを通り抜ける間に,軸動力との間にエネルギー交換を行う。ターボ形は,流れの通抜け方向に従って,羽根車の半径方向に通り抜ける遠心式,回転軸に斜交して流れ,斜め外方へ通り抜ける斜流式,回転軸方向に通り抜ける軸流式に分類される。ターボ形は容積形のように流体を一定容積にくぎって仕事の授受を行う必要がなく,流体を連続的に流すことができる。このため,大流量の流体を処理することができ,工業用などの大規模な流体機械のほとんどがターボ形である。一方,流体に加える力は,翼に働く揚力を介して発生するため,速度の2乗に比例して一定の限界がある。このため,たとえばピストンに加える強大な力を利用する往復式とは異なり,大きな圧力の増減を実現することができない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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