ポンプ羽根車,タービン羽根車および案内羽根(ステーター)を主要な構成要素とする流体式のエネルギー伝達装置。図1に基本構成を示す。ポンプ羽根車は入力軸(原動機)に,タービン羽根車は出力軸(負荷)に結合され,ステーターは固定される。液体を満たしてポンプ羽根車を回すと,液体はポンプ羽根車からトルクを与えられてタービン羽根車に流入し,それにトルクを与えて回転させステーターに入る。ステーターでは流れの向きを変えてポンプ羽根車に戻る。すなわち,図1に示した方向に液体が一巡して羽根車との間でエネルギーの授受が行われ,結果として原動機からのエネルギーが負荷に伝達される。固定のステーターが液体の流れ方向を変えるため,ステーターが力(トルク)を受けもち,その分だけ入出力軸のトルクに差を生ずることになる。したがって,流体継手とは異なり,トルクコンバーターはトルクの変換のできる変速機としての特性をもつ。
入力軸回転数をn1,出力軸回転数をn2,入力軸トルクをT1,出力軸トルクをT2,ステータートルクをTS,効率をη,速度比をe=n2/n1,トルク比をt=T2/T1とすると,
T1+TS=T2,η=T2n2/T1n1=te
となる。性能上は効率の最大値ηmaxと,e=0でのトルク比tSの大きさが問題とされる。図2にトルクコンバーターにおける速度比と効率およびトルク比の関係を示したが,ηmaxを高くするとtSが低下し,逆にtSを高めるとηmaxが低下する傾向がある。ηmaxを80%以上とすると,ポンプ,タービンおよびステーターが一つずつである形式でtS<4,タービン羽根車の数を増やせばtSを増大できる。低速度比ではステーターの受けもつトルクTSが大きく,このためtも大きくなる。しかしながら速度比が大きくなるにつれ,tは低下し1以下となり効率も低下する。この原因は,TSが負となることにある。そこで,トルク比が1となる点(クラッチ点という)以上の速度比ではステーターを空転させ,トルクを受けもたない状態,すなわち流体継手とするのが望ましい。このためには,ステーターと固定軸との間に,一方向にのみ自由な回転を許す一方向クラッチを備えればよい。この構造のトルクコンバーターをトルクコンバーター継手と呼び,高速度比領域での性能が向上する。さらにステーターを2分割にし,空転する速度比をずらせることも行われる。
トルクコンバーターのトルクと速度比の関係は,動力一定の特性に近く,自動車(おもに乗用車)の変速装置に適合するため,広く用いられている。一般にはトルクコンバーター単体ではtSが不足するので,トルクコンバーター出力軸に補助の歯車装置を組み合わせて用いるのが普通である。
執筆者:山口 惇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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液体(一般に油)を作動媒体として一つの軸から他の軸へ動力を伝達する装置。流体変速装置ともいう。二軸間の速度比を無段階に変えることができる。ターボ型ポンプ羽根車、タービン羽根車および案内羽根(ステーター)から構成されている。
ポンプ羽根車は入力軸(原動機軸)に、タービン羽根車は出力軸(負荷軸)に取り付けられ、ステーターは入力軸や出力軸とは無関係に、固定された枠に直接支持される。ポンプ羽根車によってトルク(回転力)を与えられた液体は、タービン羽根車の中を流れる間にトルクを与えてこれを回転させ、ステーターで方向を変えてポンプ羽根車に戻る。ステーターがトルクを増すので、そのトルクの大きさだけ入出力軸間にトルクの差を生ずる。すなわち、流体継手(つぎて)とは異なり、トルクコンバーターはトルクの変換を伴う変速装置である。
負荷の変動に応じて出力軸の回転速度が自動的に変化し、その変化が原動機に影響しないという特徴をもつため、減速歯車などと組み合わせて、自動車などの自動変速機として広く用いられている。自動車用に用いた場合、原動機に過大な負荷がかからず運転はきわめて容易になるが、エンジンブレーキの効果は少ない。
[池尾 茂]
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