改訂新版 世界大百科事典 「浄土論」の意味・わかりやすい解説
浄土論 (じょうどろん)
インド浄土教の論書。正しくは《無量寿経優婆提舎願生偈(むりようじゆきよううばだいしやがんしようげ)》。《無量寿経論》《往生論》ともいう。バスバンドゥVasubandu(世親または天親)の著とされる。サンスクリット語原典は現存せず,漢訳(菩提流支(ぼだいるし)訳,6世紀前半)のみ現存。偈頌(韻文)とそれを解説した長行(じようごう)(散文)の部分からなり,特に後者においては,浄土往生の方法として〈五念門〉を説いている。〈五念門〉とは,礼拝,讃嘆,作願,観察,廻向の五つであるが,なかでも観察(浄土を観想すること)が中心で,17種の国土荘厳,8種の仏荘厳,4種の菩薩荘厳よりなる。
中国において,曇鸞(どんらん)が《浄土論註》(《往生論註》)を書いてその思想を展開し,日本では法然が〈浄土三部経〉と並べて〈三経一論〉として重んじた。
執筆者:末木 文美士
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報