浮上式鉄道(読み)ふじょうしきてつどう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「浮上式鉄道」の意味・わかりやすい解説

浮上式鉄道
ふじょうしきてつどう

磁力や空気力を利用し、走行路(ガイドウェー)を非接触状態で走行する鉄道。磁力による磁気浮上方式と、空気力を利用した空気浮上式とに大別される。

 空気を利用した方式は、ホバークラフトと同じく空気を地面に吹き付け、下に生ずる圧力空気のかたまり(エアクッション)によって車体を浮上させる。フランスではアエロトランaérotrainとよび、全長18キロメートルの試験線での高速走行も行ったが、実用化には至らなかった。アメリカやイギリスでも空気浮上とリニアモーターの組合せによる研究・開発が行われたが、いずれも実用化には至らなかった。空気浮上で実用化されたものとしては、空港などでの低速度の小規模輸送システムがある。

 磁気浮上方式として最初に実用化されたのは、イギリスのバーミンガム空港での常電導磁気浮上方式の輸送システムである。1984年から実運用に入り、小規模・低速ながら世界初の実用化システムとなったが、1995年、設備の更新の際に磁気浮上方式は取りやめとなった。

 高速対応ではドイツで開発されたトランスラピッドで中国上海(シャンハイ)市内―浦東(プートン)国際空港間約30キロメートルを最高時速430キロメートルで結ぶ実用線の建設が2001年3月に始まり、2004年からは営業運転を行っている。中速対応では愛知高速交通の東部丘陵線の「リニモLinimo」などが実用化されている。

 時速500キロメートルでの高速走行を目ざした超電導磁気浮上方式での開発は日本国有鉄道で始まり、その後、鉄道総合技術研究所に引き継がれたが、現在ではJR東海が開発の中心となっている。

[佐々木拓二]

『ラルフ・R・ロスバーグ著、須田忠治訳『磁気浮上式鉄道の時代が来る?』(1990・電気車研究会)』『正田英介他編『磁気浮上式鉄道の技術』(1992・オーム社)』『電気学会磁気浮上応用技術調査専門委員会編『磁気浮上と磁気軸受』(1993・コロナ社)』『鉄道の百科事典編集委員会編『鉄道の百科事典』(2012・丸善)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の浮上式鉄道の言及

【超高速鉄道】より

…これらに対しては300km/hくらいまではレールと車輪の間に働く摩擦力を利用した既存の在来形式鉄道でも可能だが,それを超えるあたりからは在来形式鉄道に代わる走行方式や推進方式を採用したほうがよいとの考えもある。 後者の中で実現性が高いとみられているのが車体を地上から浮上させる浮上式鉄道であり,浮上の方式としては,圧縮空気を利用した空気浮上,磁力を利用した磁気浮上が考えられるが,目下のところ現実的な開発可能性からいえば磁気浮上方式が優れている。磁気浮上方式の現在の開発段階では,いずれは400~500km/hの高速は営業用に出しうるとみられている。…

※「浮上式鉄道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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