浮浪者取締法(読み)ふろうしゃとりしまりほう(その他表記)Vagrancy Acts

改訂新版 世界大百科事典 「浮浪者取締法」の意味・わかりやすい解説

浮浪者取締法 (ふろうしゃとりしまりほう)
Vagrancy Acts

16世紀イギリスで大量に発生した浮浪者乞食に対する一連の残虐な抑圧立法。イギリスにおける浮浪者を取り締まる立法の歴史は,1348年の黒死病(ペスト)に端を発した労働力不足に対応し労働可能な貧民物乞い処罰し施与を禁止した,エドワード3世治下,1349年の労働者条例までさかのぼることができる。マルクスをして〈血の立法〉といわしめた残虐な制度は,16世紀に入り浮浪者の弊害が激化した時期にみられる。たとえばヘンリー8世治下,1531年の立法では老齢者などの労働能力のない者には乞食の許可証を与えたが,強健な浮浪者に対しては鞭打ち後,出身地に送還させる措置をとり,さらに1536年法では公然と施しを乞うべからずという立場から従来の措置を強化し,再逮捕浮浪者は鞭打ちのほか耳を切り取るなどの処罰に改めた。しかし効果が不十分であったためエドワード6世治下の1547年には労働拒否者は告発者の奴隷とし,逃亡すれば額か背にS字を烙印,また浮浪者は3日間無為に徘徊したことが発覚すれば出身地に送られ赤熱の鏝(こて)で胸にV字を烙印され鎖につながれ労役に服させられた。取締法はこの後も追加されているが,残虐な措置が緩和されるようになったのは18世紀に入ってからであった。ただし,こうした立法が行われる一方,イギリスの救貧制度はしだいに整備が進められていった。
救貧制度
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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