日本大百科全書(ニッポニカ) 「海岸堤防」の意味・わかりやすい解説
海岸堤防
かいがんていぼう
coastal dike
sea wall
高潮、津波、波浪などにより海水が陸地に浸入するのを防ぐ海岸保全施設の一つで、海岸線付近でこれに平行に築造される。ときには侵食によって砂浜が喪失するのを防ぐために用いられることもある。一般に現地盤を盛り土またはコンクリートなどによって嵩(かさ)上げし、表法面(のりめん)、天端(てんば)面、裏法面をコンクリートまたはアスファルトで完全に被覆する。表法面の基部は波の作用によって洗掘されるので、石材による根固めを十分に行い、また背後の残留水と水脈がつながると、堤防基盤の土砂が流出して崩壊のおそれが生ずるので、矢板などを打ち込んで止水工を施す。多くの場合、波返しを設けており、この部分に衝撃的な波力が作用することもあるので、鉄筋で補強しておく。
構造様式は、法面が鉛直に近い直立型のものと、法面が傾斜している傾斜型、あるいはこれらを組み合わせた複合型などがある。直立型は、土砂を用いず、コンクリートで一体としてつくることが多く、堤防敷地が狭いとき、基礎地盤が良好なときに選択される。傾斜型は、比較的広い敷地が確保され、大量の堤体土砂が得られるときには、地盤がそれほど良好でなくても築造できるので広く用いられている。また複合型は、両者を適当に組み合わせ、両型式の長所をあわせもつことが可能なとき利用されている。
[堀口孝男]