アスファルト(読み)あすふぁると(英語表記)asphalt

翻訳|asphalt

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アスファルト」の意味・わかりやすい解説

アスファルト
あすふぁると
asphalt

瀝青(れきせい)の一種。天然に産する天然アスファルト石油から製造される石油アスファルトがあるが、日本では後者アスファルトといっている。ヨーロッパではビチューメンbitumenということが多い。アスファルトは黒色固体または半固体の物質で、主成分は複雑な炭化水素であり、アスファルテンという固体成分がマルテンという油状成分中に分散したものである。天然アスファルトはほぼ純粋な状態で産出するので、掘り出したままで使用できる。日本ではすでに7世紀に土木建築材料などに使用された記録がある。

 石油アスファルトにはストレートアスファルトブローンアスファルトの2種がある。ストレートアスファルトは原油減圧蒸留において残留物として得られるもので、伸度と粘着力が大きく、軟化点は通常65℃以下である。ブローンアスファルトは、約260℃に加熱したストレートアスファルトに空気を吹き込み、酸化、重合、縮合などをさせて製造したもので、ストレートアスファルトより硬く、軟化点も高い。また弾性、衝撃抵抗が大きく、温度による硬さの変化も小さい。

 日本におけるアスファルトの2007年(平成19)の生産量は年間約200万トンであり、大部分はストレートアスファルトで、ブローンアスファルトは数%にすぎない。ストレートアスファルトは主として道路舗装用に使用されている。日本の舗装道路の80%以上はアスファルト舗装であり、通常、供用寿命は10年程度と考えられている。また、空港の舗装にも用いられている。ブローンアスファルトはおもに防水加工用に使用する。すなわち、包装あるいは建築に用いる防水紙、防水板、防水フェルトをつくるために、原材にアスファルトをしみ込ませたり塗布したりする。また、粘着性を利用して、各種ブロック、板を床に張り付けるための接着剤としても用いられる。そのほかの用途としては、水、酸、アルカリに強く、適度の熱可塑性をもち、電気絶縁性に優れているので、電池コンデンサーなど電気化学工業で広く用いられている。また、練炭粘着剤としての利用も試みられている。

[難波征太郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アスファルト」の意味・わかりやすい解説

アスファルト
asphalt

(1) 黒色ないし黒褐色の固体または半固体の物質で,天然固形瀝青の一種。天然アスファルトという。本来の石油鉱床から脱出して,沖積層,洪積層などの新しい地層中に集積して鉱床をつくることが多い。化学成分上,パラフィン系以外の諸系族のきわめて複雑な有機物が集合した高分子化合物の混合物で,加熱すると流動性をもつ。この性質を利用して道路の舗装などに用いられる。有名な産地は西インド諸島のトリニダード島。
(2) 石油の減圧蒸留の残油で黒ないし黒褐色の半固体炭化水素化合物。石油アスファルトという。減圧蒸留残油そのものをストレート・アスファルトといい,そのままか,乳化剤,安定剤を用いて水で乳化させたアスファルト乳剤,あるいは灯油などの軽質油を混ぜて流動性をもたせたカットバック・アスファルトとしておもに道路舗装に用いられる。ストレート・アスファルトを加熱し,空気を吹込んで酸化重合させて硬くしたものをブローン・アスファルトといい,おもに防水材料として用いられる。石油アスファルトの化学組成はまだ十分には明らかにされていないが,油脂とレジン (この両者をマルテンという) ,アスファルテンから成り,アスファルテン中にマルテンが懸濁してコロイドをつくっているといわれる。

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