混成言語(読み)こんせいげんご(その他表記)hybrid language

日本大百科全書(ニッポニカ) 「混成言語」の意味・わかりやすい解説

混成言語
こんせいげんご
hybrid language
mixed language

共通言語をもたない人々が、通商などの目的で接触し、コミュニケーションが行われるとき、お互いの言語体系が混ざり合い、生じてくる新たな言語体系のこと。混成言語にはピジンpidginとクレオールcreoleがある。ピジンは接触の際に優位にある側の人々の集団の母語をもっぱら基盤にしているが、それより語彙(ごい)数は極めて少なく、発音文法構造も単純化されている。ピジンのほとんどは16世紀以降、ヨーロッパの貿易商人、植民地開拓者などがやって来た地域において、英語、フランス語スペイン語、オランダ語、ポルトガル語といったヨーロッパ諸語を基にして生まれた。例としては、英語を基盤とする中国沿岸ピジン、フランス語基盤のニューカレドニア・ピジンなどがある。ピジンはその機能上、長い間使い続けられることはあまりなく、コミュニケーションの目的がなくなったり、相手の言語を習得すると消滅してしまうことが多い。しかしながら、たとえば多言語社会において、ピジンが共通語として使われるようになり、その使用人数が増え、日常生活にもわたってくると、そのピジンをいつも聞いていた子供たちはそれを母語として習得するようになる。このようにしてピジンが母語となったものをクレオールとよぶ。クレオールはピジンより一般に語彙数が多く、文法、発音もより複雑になっている。クレオールの例にはハイチのフランス語クレオール、セネガルで使用されているポルトガル語基盤のクリョルなどがある。ところで、いかなる言語も他の言語の要素を多少とも取り入れて成立していることからすれば、混成言語的であると考えることができる。たとえばフランス語、スペイン語、ポルトガル語などは、極端な言い方をすれば、ラテン語がピジン化し、さらにクレオール化したものであるともいえる。

[長澤宣親]

『ロレト・トッド著、田中幸子訳『ピジン・クレオール入門』(1986・大修館書店)』『守田健一著『ピジン語小辞典』(1990・泰流社)』『今福竜太著『クレオール主義』(1994・青土社)』『パトリック・シャモワゾー著、西谷修訳『クレオールとは何か』(1995・平凡社)』『複数文化研究会編『複数文化のために』(1998・人文書院)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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