改訂新版 世界大百科事典 「済水」の意味・わかりやすい解説
済水 (せいすい)
Jǐ shuǐ
中国で,黄河,淮水(わいすい),長江(揚子江)とともに古来四瀆(しとく)と呼ばれる名川。流路の変遷が著しく,かつての河道の正確な位置決定は困難である。〈禹貢〉の時代から,山西と河南の分水嶺にある王屋山に発源し,黄河を横切るため,済(わたる)の名称がついたとされるが,必ずしも事実ではない。実際は河南省鄭州の北西で黄河から流出し,定陶付近で北済と南済に二分する。本流の北済は河南・山東境域の大湿地鉅野沢(きよやたく)を形成しつつ,臨淄(りんし)(済南)の北を通って渤海湾に注ぎ,南済は東南流し,菏水(かすい)として沛(はい)県をへて徐州に至り泗水(しすい)と合した。北済は南北朝時代まで水運に使われ,開封を都とした宋も運河として修復利用したが,12世紀末,黄河本流がその河道を奪い様相が一変する。14世紀,黄河が南流すると,北済は大清河と呼ばれたが,1855年(咸豊5),黄河が再びそこに流入した。流域の鉅野沢は《水滸伝》の舞台で,黄巣や義和団など反体制集団と関係が深い。
執筆者:梅原 郁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報