日本大百科全書(ニッポニカ) 「渦巻文」の意味・わかりやすい解説
渦巻文
うずまきもん
螺旋(らせん)形を描きながら、中心から外へ向かって広がっていく曲線文様。原始時代のほとんどすべての民族に愛好されたため、これほど広く世界各地に分布した文様はない。それは渦巻がきわめて簡単な図形であるということより、渦巻の求心的ないし遠心的な運動感が、共通して原始人にある種の神秘的な力を印象づけたためであると思われる。日本における縄文時代中期・後期の土偶(どぐう)や土版(どばん)にみられる渦巻はその一例で、これなどは土偶や土版の呪術(じゅじゅつ)的な効果をよりいっそう高めるために施文されたものと考えてよいだろう。渦巻文はその後、神秘的な力をしだいに失っていくが、庶民の着物や袴(はかま)の文様に取り上げられたり、近世以後は能、狂言の衣装や中形、小紋などの文様として長く賞用された。
[村元雄]